”誰かが見ている”『犯人は生首に訊け』


「犯人は生首に訊け」予告編

 イ・スヨン監督作!

 15年に渡り未解決の殺人事件が起こる街に、妻と別れて引っ越してきたスンフン医師。折しも漢江にバラバラ死体が浮き上がり、住民を不安に陥れる。ある日、自分の家の大家で精肉店の元店主であるチョン老人を診察していたスンフンは、麻酔で意識がない老人が行方知れずの生首のありかを口走るのを聞いてしまい……。

 これも韓国ノワール祭で、『四人の食卓』の監督の久しぶりの新作。あの大変いやあな気持ちにさせられた映画以来ということになるらしい。怖い映画だったが、我らがチョン・ジヒョンがうらぶれた中年サラリーマンの若妻になってる、という設定が一番恐ろしかったですね。
 今作も新作と聞いて楽しみだったが、予告を見たらまたも大変いやあな気持ちにさせられ、もう観るのやめようかな、と思ったものの、いやいやこれだけいやな気持ちを喚起させるということは、きっといい映画に違いないと思い、改めて観に行ってきました。

 しかしこのタイトル、法月綸太郎の『生首に聞いてみろ』を思い出すし、実際何回か言い間違えそうになってしまった(そしてこのタイトル自体も『なめくじに聞いてみろ』のパロディであるという……)。そのあたりどこまで意識してるのか、非常に新本格っぽいトリックが盛り込まれていて、まあ法月と言うよりはムニャムニャ……という感じ。

 主演はチョ・ジヌン。『お嬢さん』では変態役だったが、痩せたり太ったり最近振れ幅が激しいな……。今回は肛門科の医者役で、ボケ気味のおじいさんの患者の麻酔しての処置中に、連続殺人の無意識の告白を聞いてしまう……。

chateaudif.hatenadiary.com

 精肉店の前店主である老人と、現店主のその息子が自分の家の大家で、チョ・ジヌン医師はどんどん想像をたくましくし、彼らこそが連続殺人の犯人なのでは、と疑い始める。
 ちょいちょいトリッキーな、違和感を感じさせる映像が挟み込まれ、主人公がいわゆる「信用できない語り手」なのでは、ということが匂わされる。薬物疑惑も登場して、ますますその気配が濃厚に……。メンタルかクスリが来たら、これはもう怪しいんだ!

 ただ一人称だが語りという体裁を取っているわけではないので、目の前の映像があからさまに信用できないというのは何だかな。というのも、終盤の解決編で、解釈の違いで読み直すのではなく、実はこういうことが起きていたんですよ、という新しい映像をやり直すので、今までのはデタラメだったのかよ!となってしまうのである。おかげで後半はかなりクドく感じるし、もう少し大胆に構成してほしかったところ。

 展開される不穏さや気持ち悪さ溢れる映像は出色の出来で、往年の手つきは健在であったが、長年新作待った割には期待値に及ばない映画であったな。

4人の食卓 [DVD]

4人の食卓 [DVD]

生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)

生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)