”帰ってきたぜ!” 『スター・ウォーズEP7 フォースの覚醒』


「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」予告編

 J・J・エイブラムス監督作!

 ある事件をきっかけに消息を絶った「最後のジェダイルーク・スカイウォーカーレジスタンスを指揮するレイア将軍は、エース・パイロットであるボー・ダメロンに捜索を命じ、ボーは手に入れたデータをドロイドBB8に託していた。脱走したストームトルーパーであるフィン、惑星ジャクーに暮らすレイ、彼らがBB8と出会った時、数奇なる運命が動き出す……。

 あのスター・ウォーズに新作! ……ということで、30年ぶりぐらいに自分ホームシアターにて4、5、6と予習のために見ました。6とかこんなに面白かったかなあ。毛玉が縦横無尽に暴れまわるモフモフ大戦、愛と友情と父子の絆が帝国を倒し、あらゆる種族が抱き合う感動のラスト……。ソフトで付け加えられたヘイデンに半笑いになれたところも最高でしたね。三作でルークの背筋がピンと伸び、代わりに顔が老け込んだところも絶妙。

 それを踏まえて新作。あまり設定の詳しいことはわかっていないまま見る。何年後なのか、とかね。まあ見ただけで、ハリソン・フォードがこれぐらい歳を取って、後から生まれた子供がアダム・ドライバーぐらいの歳になるまで、とわかるわけですが、この世界のキャラって寿命長かったかな……。

 JJの映画って、MI3でも『スタートレック イントゥ・ダークネス』(http://chateaudif.hatenadiary.com/entry/20130829/1377774068)でも『スーパー8』(http://chateaudif.hatenadiary.com/entry/20110705/1309788973)でも、シリーズ、ジャンルお構いなしに最後は追いかけっこになる、という非常にバタバタした展開が嫌いだったのだけど、今作はそのバタバタが序盤に集中。それはやっぱり、「宇宙でのXウイングによる戦闘」と「ライトセーバー戦」という見せ場の二大フォーマットがあるスター・ウォーズだから、いつものJJ芸はクライマックスではお呼びじゃなくなるんだな。脱走兵フィンと、謎の女レイがストームトルーパーに追いかけ回され、放置してあったオンボロ船、もちろんファンはみんな知ってるミレニアム・ファルコンに飛び乗って飛び立つ……。主人公であるレイは若干ナタリー・ポートマン風な顔で、それはその血筋を示しているのかなあ、と思われるが、そんな彼女にやたらと必死な顔や顔面押されての変顔をさせるJJ。相変わらず落ち着きのない演出だ……。

 今回の悪役は「ファーストオーダー」。帝国軍の残党みたいな組織なんだろうが、「暗黒面が帝国を生み、今、ファーストオーダーを生んだ」という台詞によって、いつの時代も光あらば影があり悪が生まれる、ということを表現しているのね。ただまあ、トップのハックス将軍がドーナル・グリーソンということで、普段よりは強そうだがやはりまったく貫禄がない上にどことなくオタク臭が漂うので、帝国軍のコスプレをしている集団、という感じも強い。実際のところ、ナチスとか大日本帝国軍に別に所属していたわけでも血縁でもなかった人が、ネオナチやら何やらを名乗っているような感じ。うわあ、痛いやつらだ……!
貫禄のなさというと『イントゥ・ダークネス』でも悪の親玉はピーター・ウェラーでガリガリだったわけで、「痩せた白人」というのが一種の悪のアイコンになっているのであろうか。
 その上にスヌークなるCGの巨人が登場。こいつの正体はまだわからない! 生きていた皇帝じゃないよね。このモーション・キャプチャーをアンディ・サーキスがやっているそうだが、座りっぱなしだからあまり面白くはなかった。やっぱりBB8のキャプチャーをやってほしかったな。それよりスヌークの「わあ、でっかいぞお」という最初のカットが、『イントゥ・ダークネス』の戦艦対決とアングルそっくりだったので笑った。

 そして今回の悪役はカイロ・レンさん。ハン・ソロとレイアの息子で、祖父ダース・ベイダーに憧れダークサイドに落ちた男……一時はルークに師事していた。正直、親に持つにはどうかと思う、遊び人、武闘派、育ての親が死んでも涙ひとつ零さない男の三人だから、この子育ての失敗もむべなるかな……。赤い十字のライトセーバー、別に身体も顔もどこも悪くないのにわざわざ呼吸音、ボイスチェンジャー付きのマスクをかぶり、黒づくめで決める男……。JJの、「これ、おまえらファンの姿やで」という目配せがすごいな! 格好だけ真似して実力やスピリットが追いついていない感覚が、まさに劇場前やコミコンに並んだファンのコスプレだ。
 ベイダー卿はホイホイと部下を粛清するシーンが印象的だったが、カイロ・レンは物に当たる男! しかも切れるとライトセーバーで船内を切り刻むという、上司にも友達にも持ちたくない人。正直、部下としてもあまり有能とは評価されてなさそうなので、そのうち切られることになると思う。「あいつ、才能はあるんだけどな……」とぼやかれてそう。

 どのキャラクターも、怒ってる、悲しんでる、嬉しい、びっくり! などなどが常に一目瞭然で、驚くほどにわかりやすい。負傷したカイロ・レンが腿をどんどん殴るところがリアル。JJ映画は追っかけっこや変顔が定番だけど、そういう身体感覚にこだわって演出してるのね。だからまあバタバタガチャガチャした印象になるんだけど……。
 しかし、本家はもっと落ち着いた編集してたと思うけれど、このバタバタした話運び、アドベンチャー感覚が『スター・ウォーズ』シリーズにマッチしていることは間違いない。もうほんの少し話や設定がシリアス寄りになると急にミスマッチになりそうだが、着ぐるみや被り物がドタバタする絵面には完璧ではないか。
 女子ジェダイ、裏切りのストームトルーパー、BB8ちゃんなど、新キャラはみな可愛くて、旧キャラクターとの絡みも違和感がない。美術や世界観はもう完全に『スター・ウォーズ』で、そこを壊さないまま予算・技術的にアップデートしているのは、さすがに熱狂的ファンの仕事ぶりだな。そこが幸いしたか、映画全体としてもJ・J・エイブラムス最高傑作ではないか。

 やたらと台詞や展開をなぞったりするサービスっぷりは、もう少し抑えてもいいんじゃないかという気もしたが、まあシリーズ復活一作目だから当然か。絶対必要な続編かと言うとそうではないと思うが、ぼんやりとだが次も観てみたい気持ちになってきた。