”伝説は死せず”『スター・ウォーズ EP8 最後のジェダイ』(ネタバレ)


「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」本予告

 エピソード8!

 レイア率いる反乱軍がファーストオーダーの追撃を受ける中、伝説のジェダイルーク・スカイウォーカーに助力を求めるレイ。だが、ルークはそれを拒絶し、カイロ・レンがダークサイドに落ちたのは自分の責任だと告げる。カイロ・レンとフォースを通じてコンタクトしたレイは、彼を救おうと単身スノークの前に赴くのだが……。

 新三部作の真ん中、ということで、まあ何も終わらないんだろうな、とは思っていたが、お話上は確かに全然進まないんだけど、割合思い切ったことを色々とやっていて面白かった。
 EP6が好きなんだが、結局、皇帝を倒してフォースのバランスを回復したのはアナキンで、実はルークは何もしてない疑惑、というのを抱えていたのだよね。この人、ほんとにすごいんだろうか? お父さんに助けられただけで、実はヘタレなんではなかろうか? 伝説の男扱いされてるけど実は大したことなくて、だから弟子育成にも失敗したんじゃないの? とガンガン疑惑が立ち込めてくるのである。

 そんな彼のもとに弟子入りに来たレイちゃんに対し、ライトセーバーをポイ捨てして逃げ回るルーク! 身体能力だけはすごいので魚を取って暮らしているという、まさに隠居した仙人状態。渋々指導することになっても、天然入ってるレイちゃんをからかうあたり、ヨーダみたいなジジイになっている……。
 弟子にしたカイロ・レンがダークサイドに堕ちちゃった責任を感じていて、もうジェダイの歴史も閉じるべきと思っていて、引いてはそれが全部自己否定になっているのだな。
 「ジェダイ」は神格化されているけど実は大したことなかった、というのはルークが「全盛期に滅ぼされた」と言う通り、EP2、3ですでに明らか。陰謀を見抜けず、結構簡単に撃たれて死ぬぐらいの存在。そして今、伝説と呼ばれている最後の生き残りも、お父さんに助けられたマンに過ぎないのだ……。

 そんなルークに対し、かつてレイアがオビ・ワンに助けを求めた映像を見せるR2-D2と、しれっと出てきて「まだ伝えることがある」と告げるヨーダジェダイは崇められるほど大したことないけど、でもやるんだよ! ヨーダみたいなジジイになったルークがそのヨーダに「ヤング・スカイウォーカー」と呼ばれて諭され、かつてのオビ・ワンの役割を果たしに戻る……。さあ、このおじいさんの真価とは……?

 一方、ファーストオーダー。ダース・ベイダーごっこをしているカイロ・レンをうまうまと利用しているのかと思っていたスノークさんだが、今回はちょっと方針転換。ハックスをこき下ろしてカイロ・レンを立てる人心掌握術を繰り出す。が、なんだかこの結果、カイロ・レンがかえってお調子に乗ってしまった感もあり。ヘルメットをけなされ、駄々っ子のごとく自らたたき壊したカイロ・レンは確かに一皮剥けたのかもしれない……が、逆に野心が限界突破。
 かつてのジェダイが終わっているのと同様、ダークサイドもまたすでに限界が来ていて、人の欲望や悪の心を利用すると言っても煽りすぎると結局それは自分を焼く炎になってしまう好例。レイちゃんをいたぶってる間に裏切られる、というのはEP6のオマージュだが、スノークさんも皇帝と同じ過ちを犯したことで、すっかり過去のものとされてしまった。

 そんなわけでカイロ・レンの手中に落ちたファースト・オーダー。いや、彼が気を失ってるところに駆けつけたハックス将軍が、「えっ、まさか今後はこいつに従うの……?」と思いっきり不安視してるところと、その後で首を絞められ「あ、あなたが最高指導者ですう」とあっさり降伏するところが最高ですね。
 カイロ・レンが正直あまり賢くないのを、ハックス将軍も知っていて内心バカにしているあたり、ジャイアンスネ夫の関係性に似ている。ジャイアンスネ夫を暴力で支配しているが、スネ夫も彼を財力で支えつつその暴力性を利用している。持ちつ持たれつですね。

 そして、反乱軍を追い詰めたファーストオーダーの前に、単身、伝説の男が姿を現わす。「全火力を集中しろ!」と吠えるカイロ・レンに、「えっ、お前は手を汚さないの……?」と突っ込んだが、この時点ですでに腰が引けているんだな。砲撃が集中し、半ば呆れ顔で「もうよろしいのでは……?」と突っ込むハックス将軍がここでも最高!
 が、もうもうと立ち込めた黒煙をかき分け、全くの無傷で姿を現わすルーク・スカイウォーカー! えーっと、こんなドラゴンボールみたいな描写を見られるとは思わなかった。ジェダイってバリヤー張れたんだっけ……?
 ようやく自ら降りていくカイロ・レン。しかし彼もここまでハン・ソロを殺しスノークを殺して、二回も「父殺し」をやってのけているにも関わらずまるで成長していない……。やっぱり物理的に何人殺してもダメなんだな……。
 ジャイアンと言えば、空き地で歌う時に自ら横断幕を作って「みわくのリタイサル」と書いていたのが印象深いが、それを「素晴らしい。すべて間違っている」と容赦なく否定しちゃうルーク!
 直接対決でもやっぱり腰の引けているカイロ・レンは、あえなく手玉に取られて終わることに……。いやはや、伝説の男の最後の勇姿が、まさかあんなハッタリに満ちたものになるとは思わなかったよ。砲撃の後で、肩の埃をパンパンと払うところが、実は渾身の芝居であり、若手をいたぶる老人の茶目っ気であったわけだ。
 今作はこのルーク絡みの描写だけでもうお腹いっぱいで、いやあいいものを見られたなあ、という気持ちになったよ。

 さて、ジェダイとダークサイドのオワコンぶりを印象づけた今作だが、割りを食ったのが反乱軍で、当然他のポンコツっぷりに合わせてこの庶民の集まりはもっとポンコツでなければならないということになる……。
 スノークさんがいた時点でもいまいち強そうに見えなかったファーストオーダーに追い詰められ、どうにも緊迫感のないチェイスを繰り広げる中盤から、フィンとローズの渾身の反撃作戦の空振り、ダメロンへの指導者心得の伝承、唯一賢そうな作戦をしてると思ったらハックス将軍に見破られてるローラ・ダーンなど、全然切れ味がない。とりあえず、全く勝ち目が見えないまま追い詰められていく展開を、ルーク復活からの奇跡の脱出につなげたかったのはわかったが、オワコンを解体することが前提で作劇がそれに添うてしまったがために、賢い人が誰も出てこないというのは問題だな……。
 スカイウォーカー家の『スター・ウォーズ』はこれで終わったと思うが、おかげで今三部作もだいたい終わったんじゃないか、という気がする。ファーストオーダーも仕切ってるのがジャイアンスネ夫では、もう先が見えすぎだろ……。次ではレイちゃんと子供ジェダイ軍団(あとイウォークな!)に完敗しそうだな……。