”誘爆は連鎖して”『ファイアー・レスキュー』


 消防士映画!


 消防士のサム、チウ、イップの三人は、同時に臨んだ現場で無謀な判断により負傷する。自ら責任を被ったチウは出世コースを外れ、責任を負わなかったサムとイップは署長候補に。一年後、新署長となったイップにより、出世競争に敗れたサムは左遷される寸前にいた。そんな時、新たな火災が……。


 近年では韓国の『ザ・タワー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130903/1378208283)とか、ジョニー・トー監督の『ファイヤー・ライン』などがあったが、今作も消防士もの。ニコラス・ツェーショーン・ユー、アンディ・オン、同期で署長候補と言われた三人の若手が、ある事件をきっかけに明暗を分かれさせる。
 出世コースに足踏みし、現場に対しても忌避感を抱くようになったニコラス。出世の道を完全に断たれ、息子のために働くショーン。出世コースをつかみいち早く署長になったものの現場の心を忘れたアンディ・オン。三者三様の立場の激突が描かれ……描かれ……いや描かれるんだけど、アンディ・オンの扱いがひどいな! イケメンだけど華がない上に微妙に悪相なせいかTHE小物感を漂わせ、事態をどんどん悪化させていく上司ポジションに収まってしまう。ニコラス・ツェーショーン・ユーの友情と対立にスポットが当たる中、どんどんお邪魔虫となっていくアンディ・オン。
 冒頭で、三人の間に溝が生まれるきっかけとなった事件があるのだが、トラウマが残るようなものとしては若干軽い……と思わせる。が、そこはあくまできっかけで、対立が深まるにつれて作中で上乗せされていくのだな。


 転任してきたベテラン消防士としてフー・ジュンが登場し、こちらにもトラウマがあって途中まで主役のように活躍するのだが、終盤ではウソのようにいるだけになってしまう。そのフー・ジュンと共に、教官役のサイモン・ヤムが活躍。こちらは役割を全うできたかな……。
 クライマックスの舞台になる発電所側のスタッフは、バックボーンがばっさりカットされている。フー・ジュンはイケメン軍団に比べて渋い役どころなので、発電所の女性スタッフとデキてしまえばいいのに、と思ったのだがありませんでした……。


 そして、ジャッキーはゲスト出演でした。クライマックスにもジャッキーが助けに来たらどうしようなあ、と思ったが、出て来ず安心した。登場するCMで『ポリス・ストーリー』のテーマがかかるということは、俳優ジャッキー・チェンが存在している世界ということだな。


 割合、ていねいにお話を作ってある方で、中盤から伏線を張って後半に大爆発という構成。いろいろ盛り込みすぎなのは相変わらずで、ドタバタの中でどんどん存在感が薄くなるキャラも。悪い奴は誰も生き残れないしな……。最後にはニコラス・ツェーショーン・ユーの関係でまとめてくれて、体裁も保った。CGの精度はまあまあだが、炎よりも黒煙にスポットを当てることで、臨場感も迫力もキープ。


 そんなこんなで特別な瑕疵もなく、それなりに楽しめる……んだが、アンディ・オンの存在だけが、なんだか喉に小骨のように突き刺さるのである。最後に幻で登場するあたりもまったく謎で、いやいや、彼は絶対恨みを残してると思うよ……。

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