”面を上げよ"『観相師』
ソン・ガンホ主演作!
息子と義弟と共に海辺で貧しい暮らしをするネギョンは、人の性格や運命、未来までをも見抜く凄腕の観相師。世を倦んで田舎暮らしを送っていたが、仕官を志す息子が家を離れたのをきっかけに、自らも芸妓に招かれて都で観相を始める。彼の才能はあっという間に評判になり、やがて宮廷の権力者までもが目を付けるように……。
韓国の古装片(とは言わないか……)は、やっぱりカンフーもワイヤーアクションも出てこないからちょっと物足りないよねえ、とか言いがちな今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
人の顔から性格やその運命を見抜く能力を持つ観相師のガンホさん、この能力は職業的な技能と言うよりは、特殊な才能と言うか超能力に近いものなのだな。一応、この時代にも「こういう相の人はこういう運命を辿る」というような記録も存在していて、時にそれらが根拠になる。が、それは特に統計やデータとして存在しているのではなく、その時その時に手っ取り早く納得させるだけの説得力を持つ事例、要はハッタリの材料でしかない。たいがいの観相師はそのハッタリのみで世渡りしているわけだが、ただ一人、ガンホさんは違うのだ……! が、時代が進んで、「迷信だよ」「時代遅れだよ」と言われがちでもあるので、結局彼もハッタリに頼るわけだが。
そして、ガンホさんがそういう飛び抜けた観相力を持っている一方で、「素人目から見てもあいつは悪相だ〜!」なんて言われる人も出てくる。そこで登場するのが、『新しき世界』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140302/1393753744)のイ・ジョンジェ……! 「狼の相」を持つ男、と言われる危険人物である……のだが、この人はそんなに顔面力ある方じゃないよね。ギラギラした野心家としてはちょっとスマートすぎるので、無理やり顔に傷をつけたりして強面を演出している感じ。
このあたりからガンホさんも宮廷の陰謀劇にどっぷりはまり、観相をしているのか勢力図に釣られて動かされているのか、だんだんとよくわからなくなってくる。彼と弟、息子の三人は揃って小市民的な善意の持ち主で、観相によって半ば未来を読みつつも、離れたところから俯瞰するのではなく渦中に飛び込んでインサイダーとなることで、その善意に流されて大局を見失ってしまうのだな。
そして、イ・ジョンジェに付き従い、観相師の危険性を見抜いて仕掛けを打つ謎の策士のキャラが良かったな。ガンホさんと彼の知恵比べのような様相を呈してくるあたりと、冒頭に登場する権力者が誰なのか、となかなか結びつかないあたりも面白い。
前半の和気藹々、コミカルな雰囲気が、後半に悲劇的に寸断されるギャップがちょっと狙い過ぎた感があり、少々物足りない感もあるものの、全体に水準は満たしているドラマでありました。
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