”始まってすぐ終わらないか”『呪怨 終わりの始まり』
ひさびさ、新作!
前任教師の退職により、臨時教員であるにも関わらず担任を持つことになった結衣。前担任の日誌は、不登校が続く佐伯俊雄という児童の家を訪ねたところで終わっていた。不審に思い、自らも佐伯家を訪ねた結衣は、そこで俊雄の母、伽倻子と会うのだが……。
……新作と言いつつ監督も代わってるし、設定も一回リセットされているので、実質「リブート」と言ってもいいのかな。呪われた家がピカピカに新しくなり、当然、伽倻子や俊雄君の役者も交代している。
デジタルで隅々まで見える綺麗になった家、女優陣の完璧なメイクに、オリジナルは遠くなりにけり、と思わされる。否が応でも見えてしまうものをいかに見せないか、ということで、カメラワークは寄ったり動かしたりとかなりダイナミックになっていたし、美術も人間も下手に汚しを入れず綺麗綺麗なままに撮ることで、逆説的に映画らしい異空間を構成する。デジタル時代にマッチした絵作り。
……が、やはりまあ制約も多くネタも尽きてるところで苦し紛れにやってる感は否めず、肝心のショック演出も定番ネタばかりなのにむしろ出し惜しみ気味であったね。
今回もおなじみのオムニバス構成なのだが、佐々木希とトリンドルの出番を確保せねばならんからか、一話ごとにショックシーンがあってキャラクターが惨殺される展開も、前半はやたらと寸止めが多い。このタイミングなら惨殺だろ、というところで生き延びてしまうのが歯がゆく、中盤に女子高生が死にだすあたりまで結構フラストレーションが溜まった。
二人の出番を後半まで引っ張るための大人の事情なのか、それとも本気で面白いと思っているのか、時系列の入れ替えによるサプライズ的な構成もあり、実はのぞみんの登場パートが現在とするなら、トリンドルの登場しているのは過去パートになっている。実に十年のラグがあることになっているのだが、その時間差もあまり活かされておらず、多分前者だな……。
佐々木希はちょっと年取って、教師役ということで大人しめなメイクをしたのが幸いして、人工的な部分が薄くなっていた。まったく演技をさせていないが、そこは怪物をドンと映すので、恐怖に怯える人間の表情に力点がかからないこのシリーズには向いていたかもしれない。トリンドルもまったく同じ扱い。普通の台詞は女子高生役の子達も含めてまあ悪くないが、恐怖シーンで「何これ!?」とか言い出すと急に下手に聞こえるので、思い切ってそこも削ってもよかったのではないか。
筋的には俊雄君が首魁的な扱いになり、伽倻子は一歩引いてサブの位置に。この設定も、ちょっと変化をつけてみました、程度にしか読み取れなかったな。
お話の時系列入れ替えを「主」とするなら、このキャラの立ち位置の変更も「従」であり、さらには時系列入れ替えすらものぞみん起用という「主」に対する「従」であるような、まさに事情ありきのリブートでありました。『白い老女』『黒い少女』の方がまだなんぼか面白かったわい。あ、トリンドルは別に主役ではありませんから……今作ぐらいの出番と重要度で主演とか言っちゃうのはほぼ詐欺だな……。
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