"皮を剥がれて真人間になろう!"『ハッピー・アイランド』
カナザワ映画祭2013、四本目。
福島第一原発の事故の後、立ち入り禁止区域には奇形の植物や動物がはびこっている!? そんなドキュメンタリーを撮影しようと、番組スタッフたちが禁止区域に入り込む。たどりついたのは、すでに打ち捨てられた山村。だが、一軒の家で井戸や栽培中の野菜、さらにそれを守るために仕掛けられた罠が……。罠にかかり怪我をしたクルーを、そこにただ一人住んでいる謎の老人が助けるのだが……。
映画祭も二日目に突入。今回初めての試みとして、一般公募で選ばれた映画。77分ぐらいで、長編としてはやや短め。監督は医者であり、パラエストラで中井祐樹氏に師事する柔術家でもある、ということ。
タイトルの『ハッピー・アイランド』は「福島」の英訳であるが、単に避難区域で周囲から孤立しているロケーションだから選ばれたというだけで、あまり話には関係なかった。奇形の動物はいないか、というドキュメンタリーと呼ぶにはあまりにバカバカしい三文番組を撮りに来たスタッフ五人が世にも恐ろしい目にあう、というお話。
孤立した村で一人で自給自足生活を送っている謎の老人……が出てくるのだが、この人がやや痩せたブルース・リャンという感じで、ニヤニヤしながらもちょっと凄みがあるあたりも似ている。これからこの爺さんが、世の中を舐めてるこのスタッフどもをばちまわしまくるのだろう、と思ったらその通りで、罠にかかって足を怪我した助手をまず血祭りにあげ、他の男たち三人もアキレス腱を切って監禁! 一番口の利き方を知らなかった奴から、拷問にかけまくる!
拷問を楽しみつつ、人肉も食用に採取する、という一石二鳥の展開。この爺さんの役者も本業は東大卒の医者だそうで、見た目からしてマニアックな、何に使うのかもよくわからん医療器具で拷問を繰り返す。よく通る声で、人生訓とも皮肉ともつかない台詞回しを発しながら、いかにも楽しんでる風情がいい。
監督やメインキャストが医者である、という裏話を含めるとより面白い、という感じで、突き抜けた感のある人体破壊はその職業ならでは。廃村の雰囲気も良かったし、ただひたすら人が殺されるだけのストーリーもシンプルでいい。
ただまあ、さすがに途中でちょっと飽きた……。捕まって殺される連中がバカすぎて、可哀想とも思わないし、さりとてガンガン殺されたらいいのにと思うほど憎々しい連中でもないので、見所が拷問や人肉食のテクニカルな側面に集中してしまったからかな。
でも、今後が期待できる監督と思うので、次は医者よりも柔術を題材にした拷問映画を撮ってもらえたらと思います!(えっ) その時には、師匠の中井祐樹氏が殺人鬼役で出演したらいいと思うよ!
グロいの苦手な人には全くオススメしないが、やはりというか途中退場が二人、気分が悪くなって廊下出てひっくり返った人が一人いたそうで、上映後、それをまた嬉しそうに語る映画祭代表小野寺氏の笑顔が印象的でありました。