"まんがにっぽんむかしばなし"『SHORT PEACE』
大友克洋他のオムニバスが劇場公開。
どうでもいいが、幼児の頃の僕は『まんが日本昔ばなし』を、略して「むかばし」と呼んでいたらしい。ほんとにどうでもいい。
『九十九』
……寝た。いやー、ごめん、山ちゃん……。ラストしか覚えてない。
『火要鎮』
これは表現が凄かった。着物の色彩から炎のちらつきまで、細部までこだわりを感じられる映像が素晴らしい。
家を勘当され火消しになった男と、その幼馴染で意に染まぬ結婚を強要される女。逃避したい女が、事故で屋敷に火をつけてしまい、消しにくる男の方は、女の気持ちなど露知らず……。短い時間の中に心の機微を凝縮して描き、悲劇的な結末へと昇華していく。
しかし、山口県での放火事件が話題になったが、「つけ火」の背徳的な快感を感じてしまう内容。自分の境遇を壊したい人間が囚われる、圧倒的な破壊の愉悦。すべてを燃やし尽くしたいと願う自らさえも飲み込んでいく熱と光。その業火を止めることの出来ない男の無力さと、物の哀れ。
まあ短いから、個人的にはハートを揺さぶられるようなことはなかったのだが、豪華な「日本昔話」という感じで良かったね。
『GAMBO』
白熊VS鬼! 異邦人としての鬼のイメージを拡大解釈して、SF要素を入れ込んだあたりは特別面白いと思わなかったが、フィクションの存在である鬼と、現実最強の生物である熊との対決は心躍る。熊に対しても執拗にチョークを狙う鬼は、知性体と野生の怪物のいいとこどりという感じの強さで、おまけに熊よりもでかいのであった。
野武士のキリシタンっぽい装束は良かったが、ちょっと「祈り」が指すものが漠然とし過ぎてたか。
『武器よさらば』
適当に弱そうで、適当に頑丈で、適当に火力があって、適当に危険で……見た目は全然違うのだが『ターミネーター』のスケルトンや『ロボコップ』のED209を思わせる挙動の無人兵器。歩兵クラスの戦闘力でギリギリ対抗できそうなんだけど、やっぱりそのひるまない、損耗を恐れない、ダメージを負っても動きが落ちない機械としての特性は脅威で、人間側を追い込んで行く。
狩る側と狩られる側が逆転するサスペンスとしても観られるが、最後に示されるもう一つの反転、武装を解除しにきたはずが、自分こそが解除せねばならなかった、という皮肉が面白い。
落ちは読めてたが、全編に渡るメカへのフェティシズムが楽しかったね。
ショート・ピース (アクション・コミックス―大友克洋傑作集)
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