”宇宙監獄、落下中!”『ロックアウト』
リュック・ベッソン脚本!
西暦2079年。宇宙に建造された、囚人を冷凍刑にする刑務所MS-1。アメリカ大統領の娘であり人道支援を進めるエミリーは調査のためにそこを訪問するが、面会した囚人にSPが銃を奪われたことで脱獄を許してしまう。囚われたエミリーを救うため、シークレットサービスは収監予定だった犯罪者スノウと取引し、彼に救出を託すのだが……。
製作ヨーロッパ・コープ、脚本リュック・ベッソンと聞くと、生暖かい笑みを浮かべてスルーする、というのが最近のパターンになっている。今年は『コロンビアーナ』をスルーしたばかり。ついでに動けるハゲことジェイソン・ステイサムも『トランスポーター』の印象が強いせいで、その巻き添えを食って最近のアクション映画も軒並みヨーロッパ・コープ扱いされてスルーされている、という気の毒な状況なのであった。
話がずれた。まあそんなヨーロッパ・コープ作品ですが、その中でもジェット・リー物件は安定の面白さだったり、『ミシェル・ヴァイヨン 』なんかもずっこけぶりが嫌いじゃなかったり例外もあるので、好きなジャンルだったらたまには見てみようという感じ。今作はSFで刑務所ものなんだから面白そうじゃないか!
ベッソン脚本というと、『クリムゾン・リバー2』の試写の際に「脚本を一週間で書き上げた!」とさもすごいことのように紹介されていたことが記憶に残っているが、単に雑でいい加減なだけだよね、それは……。
しかし、今作のオープニング、果たしてテンポだけは異様な速さで進行していく。銃撃戦からバルクール、さらにバイクチェイスへの繋ぎの速さがすごい! それぞれに対して一切こだわりが感じられず、ただ入れ込んで消費しただけのようだ。
その後、宇宙に出て、刑務所やら何やらSF設定が続々と飛び出してくるのだが、こちらも完全に単なる背景で、どんどん流されていく。リメイク版『トータル・リコール』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120825/1345818870)では凝ってるのはいいがこれ見よがしにひけらさかされてうんざりしたものだが、筋も矛盾もクソもなくどんどんすっ飛ばしていく展開は、体感的には気持ちいいのだけれど、ある種の危うさも感じるね(大げさ)。予算がなくて大して描き込めなかったという面はあるのだろうが、刑務所のあるステーションも内部の形や位置関係がさっぱりわからず適当の極み。
ストーリーのいい加減さもすごい。ヒロインが刑務所内部の人体実験を疑ってて、それが明らかにされる展開はいいとして、「こんなことをしていた! なんてひどい奴らだ!」で終わりで、実験台の囚人はまったく助けないあたりにびっくり。だいたいの囚人はヒャッハーと暴れまくっているが、大事な情報を持ってる主人公の仲間だけは都合悪く(良く?)痴呆になっちゃってるあたりも笑える。
クライマックスの宇宙に飛び出してからの展開も、「えっ!?」「おいおい!?」「まさか!?」と三回ぐらい驚いた上で爆笑できるのでオススメだ。
かくも突っ込みどころは多いのだが、突っ込んでる間もなく次のボケが繰り出されるので、飽きないことは飽きない。いい加減に書いてるから、キャラクターがどんどん理屈に合わない予想を外した行動を取ってくるあたりも面白いしな!
ガイ・ピアースの演じる主人公は、減らず口を叩きまくりのキャラで『ダイ・ハード』的な面白さはあるんだが、もうちょっと印象的なセリフが欲しかったかな。テンポ最速、描写適当、キャラは面白げな台詞を言うけど「センスある」一歩手前、という、まさにベッソン脚本の典型のような映画であった。でも、愛とか友情とか無理に入れてなくてドライにまとめててる分、後味はいい。これは当たりの部類だと思うね。
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