"俺が法だ! 死刑!"『ジャッジ・ドレッド』
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荒廃した社会において、警察と司法の機能を兼ね備えるエリート集団「ジャッジ」。その中でも最強の武闘派として恐れられるジャッジ・ドレッドは、その苛烈な法の行使によって、密かにジャッジ上層部からも疎まれるようになっていた。そして、マスコミにより密かに暴かれようとする彼の出生の秘密。陰謀により無実の罪を着せられたドレッドは、ジャッジ仲間のハーシーの弁護も虚しく、自分が捕らえた囚人たちと共に刑務所に送られることになるのだが……。
中学〜高校ごろにアクション映画をまとめ見してたのだが、当時はシュワ派で、そのあとすぐにヴァン・ダム、ドルフに流れ、セガールの途中で飽きた、という流れを持っているだけに、スタさんの主演作も観てないものがかなりある。『クリフハンガー』『デイライト』『刑事ジョー、ママにお手上げ』etc、etc……。この『ジャッジ・ドレッド』もその一本。
原作との相違の数々が、映画秘宝のムックでも指摘されていて、 そんなこんなで出来も良いとは言えなさそうだし、おそらく一生見ることはないだろ……と思っていたのだけど、何があるかわからんもんで、このカナザワ映画祭である。
爆音上映の迫力は堪能したが、まあ確かにしょーもない映画だった! 「法の精神」とか、「作られた人間」の葛藤とか、ちょこちょこっとメインテーマみたいなものが姿を現し、スタさんが苦悩の表情をする……のだけど、 そこから先には全然踏み込まない。素晴らしく中身の薄さで、シリアスさはないわけじゃないけどかなり適当。まあ言うなればアクション映画の中の味付け程度。
そもそもスタさんと同じ遺伝子から生まれ「似てるわ……!」と言われるアーマード・アサンテが、まったくスタさんと似てないあたりが適当すぎる。「似ていない! 俺と奴は違う!」と吠えるスタさんだが、ここは本来、「顔は同じだが、やってることは違う」「いや、法の名の下かそうでないかで、やってることも同じ人殺しじゃないか?」という二重のテーマを孕んだ深遠な部分のはずなんだが、そもそも顔が似てないので破綻してるんだよな。
引退したジャッジは、壁の外の世界に法を伝えに行く、という苛烈な設定も面白く、もうこの当時すでにヨレヨレしたおじいちゃんだったマックス・フォン・シドーがスタさんの起こした事件の責任を取って引退させられる。要は体のいい追放で、さもめでたいような音楽に送られて銃一本だけ持たされ砂嵐の中に放り出されるシドーさん。しょっちゅう振り返り、ほぼ半泣きで「都会から出て行きたくないよう、権力から離れたくないよう」と嘆いてる顔にバカウケ。
スタさんの俺様ぶりも素晴らしく、大音響で決めゼリフ「俺が法だ!」「死刑!」を炸裂させるもはや大きなこまわりくんに過ぎないキャラは、上司の「ジャッジに権限与え過ぎたね……」という嘆きとピタリと重なる。マスクで顔を隠してるのは最初だけで、後はダイアン・レインと共にタンクトップスタイルを貫き、大暴れ。今でこそ、再評価が進み作家性も認知されたスタローンだから、「ああ、またスタさんがやってるよw」と生暖かい目線で観られるが、公開当時はさぞ酷評されたことであろう。
大味なアクションとおバカなキャラクター、スタさんの声に反応する銃などのチマチマしたSFごっこな小道具、 色んな要素が詰め込まれがなら勢いだけで突っ走る怪作。しかしまあ、今、大スクリーンで大音響で観たらやたらと面白かったから不思議だ。
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