"僕もこんなヒーローならなりたいです"『アメイジング・スパイダーマン』


 新シリーズ開始!


 両親の失踪後、叔父夫婦に育てられ、高校生になったピーター・パーカー。ある日、科学者であった父の研究ノートを見つけた彼は、かつて父が働いていたオズコープ社にそれを持ち込む。父の同僚だったコナーズ博士と出会い、彼の施設にいた謎のクモに噛まれた彼は、それ以来、不思議な力を持つようになる。それは、かつての父の研究成果なのか? そしてコナーズの助手であり同級生のグウェン・ステイシーと恋に落ちるピーターだが……。


 サム・ライミ版(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110827/1314371603)が大好きで『3』を観る度に号泣してしまう僕なんで、今作はもはや企画の時点から懐疑的な代物。しかしまあマーク・ウェブ監督で、最近良く観るアンドリュー・ガーフィールドエマ・ストーンが出ているんだから、一応観ておこうかなあ、という、全く乗り気じゃないテンションであった。


 主演のアンドリュー・ガーフィールド演ずるピーター・パーカー、これが実に未成熟な感じで、全然人格が完成されてないかのよう。この人、もうじき三十路なのに、ほんとに子供、高校生みたいだよなあ。『ソーシャル・ネットワーク』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101030/1288442495)や『わたしを離さないで』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110329/1301394078)ではその未成熟さが、騙されて信じ込んでギャーギャーわめくあたりにハマりまくっていた。さあ、今作では当然、その未成熟さが試練を通過して強さに変わるのだろう、と思いきや、そこは三部作の序章、緩い雰囲気のままで最後まで流れて行ってしまった……。父親との関係が主題になっているのだけれども、このキャラだと多分この事件が起きるまでそんなこと意識もしてなかったんじゃないか……。後からベンおじさんの事件も起きるわけだが、事件の発端がリアル父親、成長の発端がベンおじさんということで、見事に分散して印象が薄い。
 しかしながらここで特筆すべきは、いかにも未成熟なピーターに対するベンおじさん役のマーティン・シーン。ちょっと頑固な男の存在感が圧倒的すぎる。語りのシーンが多いせいもあるのだが、最後の渾身のモノローグも含め、凄い熱演だ。きっとここには息子チャーリー・シーンの子育てに失敗したことへの熱い想いが秘められているに違いない。


 変身してちょっとお調子に乗ってしまったり、スーツで黄昏てたら電話かかってきて卵買って来いと言われるなど、未成熟さがはまっているところもあり。何せ女を口説けない。モジモジモジモジ……挙句の果てにあっさり正体を明かしてしまった〜! こういう安直な行動は、そのうち報いを受けるのが常道だと思うが、それも次までお預け。
 さて、その報いとして次作で非業の死を遂げそうなエマ・ストーン演じるヒロイン。ま〜、はっきり言ってこの扱いはがっかりだね。全然活躍せんではないか。まさに正統派ヒロインで、恋愛の対象としてなんとなくいるだけ、「花を添える」ぐらいの扱い。んん〜、ちょっと太もも見せてればファンは満足すると思ってるのか? せっかくの『スパイダーマン』なんだから、もっと思いっきり高いとこから吊るしてぶち落として、散々な目に合わせないとダメだろ〜。無意味に水ぶっかけたり、リザードの尻尾に絡まれて悶えたりさあ。
 クライマックス前は、実はそんなに関係ないのに最終決戦の現場にうっかり居合わせてしまうというお約束のパターンにはまり、あ〜あというかしめしめというか、これから大変な目にあうのだろうなあと思ったら、まさかの親父の身代わり……。安直に正体を明かした報いは、このお父さんが担ってしまったね。で、その果ての葛藤が……と思ったらあっさりなかったことにしそうな雰囲気であるという……。
 ケッ、イチャコラしながらヒーローかよ、おめでて〜な。こんなんで良かったらオレがなりたいわ! はっ、これがヒーローに対する正しい憧れというものなんですかね。


 学校が襲われる、ってのは旧三部作にはなかったし、図書室バトルにのぞくマーク・ウェブのシャレオツ演出は光った! マスコミや警察に嫌われるあたりも踏襲しつつ持って来たクレーンのシーンは面白かったし、リザードと謎の声との語りは、グリーン・ゴブリンのそれを踏襲しつつ微妙に外していて良かったね。


 そんなこんなで、部分的にいいところもあったものの、見たようなシーンは多いし薄いし長いしで、あくびこきながら観てしまったよ。次作で化けてくれればいいけどねえ……。

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