”意味有りげな顔しとけ”『悪魔の秘め事』


 未体験ゾーンの映画たち2014、二本目!


 新進女優のゾーイだが、なかなか大作に声がかからずインディペンデント映画での主演ばかり。母親のキャサリンが休業中の大女優なため、大きなコンプレックスを抱いている。娘の演技に刺激を受けたキャサリンは復帰を決めるが、それを快く思わないゾーイは母の再婚相手を誘惑する。母娘の間には大きな闇が横たわり、かつて父が殺された事件の謎も未解明のままだった……。


 先日の『MUD』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140219/1392725316)はなかなか面白かったんだけど、あれは言わば今イベントの看板的ポジションだから、そりゃあある程度は面白くて当然だろう。そうでない映画たちこそが真の未体験ゾーンなブツに違いない。やっぱりそういう映画を体験しなくちゃね……ということで、行ってきました。


 冒頭、ロザムンド・パイクさんがあの角張った顔で、意味ありげな視線をカメラに向ける……いかにもわざとらしい表情だな、とおもったら、これが実は作中作の撮影風景だったのだな。そこへレナ・オリンが現れ、意味ありげな視線を送る……。
この二人、親子で女優なのだが、母親はオスカー候補のビッグネームだが休業中、娘はインディペンデント映画で辛うじて主役ぐらいの泡沫女優。大物が自分の撮影に来たせいで話題はさらわれ、控え室をしょぼい呼ばわりされ演技にもダメだしされ、娘のコンプレックスは頂点に。


 ここから母と娘の対立が表面化し、娘が母の再婚相手を寝取ってエロティックサスペンスのようになる……のだが、ロザムンド・パイクさんの『タイタンの逆襲』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120402/1333347734)や『アウトロー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130208/1360236970)の、硬派で四角四面、男女関係にはちょいおぼこいキャラが邪魔して、何か今作でも無理してやってるように見える。それはまあ話の展開上は間違ってないのかもだが、ちっともエロくはないよね!
 レナ・オリンが意味深に微笑み、オーディションのシーンでデ・パルマの名前が出たりと、ポランスキーデ・パルマのような映画が撮りたいのではないかと思うのだが、画面にびっくりするぐらい豪華さがなく、間が持たない。75分しかないので、さぞ凝縮された映画なのだろう、と思いきや、情報量がなさすぎで、精一杯引き伸ばしてこの尺にしかならなかったのであろうな……。


 まさに未体験のままにしておけばよかった映画で、初っ端から悶絶! これですよ、これが未体験ゾーンの平均的クオリティというものですよ。

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