『新機動戦記ガンダムW フローズン・ティアドロップ 3 連鎖の鎮魂曲(上)』隅沢克之

 三冊目! 一、二巻の感想はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110228/1298901941


 カトリーヌによって奪取された「プロメテウス」を奪還すべく、「スノーホワイト」と「ワーロック」が出撃する。搭乗者はヒイロ・ユイ、そして二代目デュオ・マックスウェル……。そして、かつてのトロワ・バートンの後継者もまた、厳しい訓練に耐え、新たなトロワとして動き出す。しかし、カトルの後継者たるカトリーヌもまた、火星の砂漠で彼らを待ち受けていた……。


 今回収録分では、過去の話は一旦打ち止めで、トロワとカトル、それぞれの後継者の話が中心。キャスリンがいつの間にか武闘派になってて驚いた……ガンダム乗れそうだね。
 まあまだまだ「設定の開陳」の段階なので、メインのストーリーが動き出したとは言えないし、やっと出て来た「ガンダム」もマントをかぶって姿を見せないという念の入れよう。んなばかな、なんでそこまでして姿を隠すんだ、と普通なら思うところだが、ケレン身とハッタリがウイングの命だから、これはこれで良し。そのうち5機揃ってババーンとデザインを出してくれるのを楽しみに待とう。次なる「ナタク」もまだ名前さえ見せてないしな。
 しかしながら、ゼクスの仮面かぶってるリリーナは、シュールすぎて笑ってしまったなあ。旧作の「記号」をいかに無理なく盛り込むか、というところも注目ポイントだが、そこはケレン身とハッタリ(以下略)なので、無理あり過ぎで強引に入れてしまうぐらいの方が「らしい」。


 さて、旧作を解体し再構築する要素もあるのが本作だが、旧テレビシリーズは過剰な説明を排していたため、逆に今回オフィシャルとして設定された部分に何か違和感というか、解釈のズレが生じて来ることも事実……いや、ヒイロとデュオってそんなコンビネーションよかったっけ? テレビシリーズでもエンドレスワルツでも、別々に戦ってるところばかりで、映像ではそんな要素はなかったよなあ。お互いに信頼はしてるけど、それは「単独で任せても大丈夫」という信頼感で、集まる事によって大きな力を発揮する、というスピリットはこの作品にもっとも欠けたものではなかったか。映像で矢継ぎ早に魅せる『ガンダムW』という作品に僕が感じていた魅力は、なかなかこの小説と言う媒体で表現するのは難しいし、設定全てを握る作者故に陥ってしまう罠があるように思う。
 そこを打破するには? 当然、過去作の答え合わせに留まらない、新たなる壮大なストーリー、予想できない息もつかせぬ展開を用意してみせるしかないだろう……。

MG 1/100 OZ-13MS ガンダムエピオン EW版 (新機動戦記ガンダムW Endless Waltz)

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