『アンダーワールド・ビギンズ』

 奴隷と姫の、種族と身分を超えた恋。それを許さぬ王。王はやがて娘を殺し、決起した奴隷と宿命の対決を迎える……。


 時代は中世、実にベタなストーリーだ。だが、これが実は奴隷=狼男、王の一族=吸血鬼の、今後数百年に渡って続く争いの序章なのである。
 現代で暗躍する吸血鬼の処刑人セリーンの活躍を描いた『アンダーワールド』の前日談に当たる映画。ヴァンパイアの始祖の一人であるビクター=ビル・ナイと、最初の知恵あるライカンであるルシアン=マイケル・シーンが現代と変わらぬ姿で登場し、その因縁が明かされる。
 実際の話は一作目の折にも回想でやってたので、だいたいこんな感じかとわかっていたものをそのままなぞっただけなので、いささか退屈。が、え?この二人で主演?というバイプレーヤーを中心に据えながら、熱演と神経の行き届いた映像で惹き付ける。
 吸血鬼の城と言う限定された舞台に予算をつぎ込み、クライマックスのライカン襲撃のスペクタクルまで、そのステージだけで見せる構成が上手い。


 娘の処刑を命令しながらも、密かに悲嘆に暮れる王を熱演するビル・ナイが素晴らしく、娘と交わった狼への憎悪も含めて、表裏一体の感情を巧みに演じ分ける。


 これ単品ではまあまあ、というところだが、見終わって一作目がまた観たくなった。そういう意味では大成功な作品であろう。