祝、合格。

 オレは勉強が嫌いだ。
 特に、学校という奴が嫌いだ。
 あの「授業」という名の、机に向かって教師の話を聞く行為がたまらなく嫌いだ。
 宿題、テスト、論文、何もかも嫌いだ。

 行きたくもない小中学校の義務教育を耐え忍び、その上、わざわざ高校まで行ってやった(ものすごく楽なとこを選んだが)。
 もうゴメンだ、たくさんだ、ということで、大学には行かなかった。

 しかし、世の中とはうまく出来ているもので、三つ下のオレの妹は、異様なまでの勉強好きである。
 大学を出た後も、別の大学で修士を取り、一昨年から京大で二回目の修士。オレの嫌いな授業やら論文やらが大好きなのだ。きっと、両親の遺伝子の勉強好きな部分は全て妹に受け継がれたに違いない(その代わり、こいつにはOLなんて絶対ムリだ)。

 さすがに修士論文には苦しんでいたようで、かなりテンパッていた。この間、ようやく提出を済ませ、正月にも帰って来なかった家に久々に帰って来た。なかば放心状態で、オレがこの一年に買ったマンガをすべて読んだ後、再び京都へと戻って行った。

 そして今日、提出した論文の合否発表。母親は相当やきもきしていたのだが、親の心子知らず。夕方になってようやく来たメールに一言。

「合格」

 転送を受け、会社でオレも万歳三唱。「妹のことでそんなに喜べるなんてすごい」とか言われた。そうか?
 何はともあれ、ホッとした。いや〜良かった良かった。めでたい限り。
 次は博士課程で、さらに困難な戦いが待ち受けているのだろうが、オレの譲った(笑)勉強好きの遺伝子は無敵だ。次も必ずや勝利することであろう。