見よ、パリは燃えている。ルシフ様、歯科病棟奮戦記。
親死らずがなんとなく虫歯になっているっぽいので、歯医者に行って来ました。そこらへんの医者じゃなくてバカでかい大学付属病院。13階立てで全て歯医者という、とんでもないビル。4階の口腔外科だけでも、歯医者がひしめきあっている(半分は学生か何かだろうが)。
左の下の歯だったのだが、レントゲンを撮ると完全に真横を向いている上にがっちり骨に埋まっている状態。
歯医者は「抜歯」という表現を使うのだが……。
あとで日記に書くために、その「抜歯」の流れを聞いてみる。
「まず歯茎を切開しまして」
「はあ」
「露出した骨を削ります」
「ひあっ」
「隙間が出来たら、歯の半分を砕いて取り出します」
「ふあ……」
「そのあと残りの半分を引っ張りだしまして、また砕きます」
「ヘアッ!」
「最後に縫って終わりですね」
「ほあっちゃあ!」
「歯を抜く」と言うよりも、ぶち砕いて除去するという作業。何が「抜歯」か!
「一時間ぐらいかかりますよ」と言われ、もう暗胆たる気分。だが、オレの好きなKー1選手アレクセイ・イグナショフが、もうじき膝を手術するので、オレも負けないように頑張ろうと心に誓うのである。
7回ぐらい麻酔を打ちこまれ、早速手術開始! ピッピッピッと無造作にピンセットで摘み出された赤いものは、切除された歯茎だろうか。
さすがに医者は手慣れたもので、作業自体は飛ぶように進んでいく。ま、なんてことはねえな、と思っていたが、しかしノミと金槌が登場した時点で、さすがにゲットなる。
「ちょっと響きますよ〜」
麻酔が効いているから痛みはないが、衝撃が、神経の奥まで響く響く!
「いや、なっかなか割れへん。いまいち研ぎが良くないなあ」
とぼやく医者。早く割れてくれ!
「(ノミの)専門の職人みたいな研ぐ人がおるねんけど、そういう人がどんどん少なくなってるねんよな」
と、助手の学生に(オレには)どうでもいい豆知識を披露する医者。
ノミのあとは、歯医者最強の武器、あのチュイーンとなるドリルの登場だ! またもピッピッピと白いものが放り出される。うーむ、これでようやく半分か?
続いて歯の奥の部分を引っ張りだそうとするのだが……これがなかなかうまく行かないらしい。
「あれっ?」
「うーん」
「固いな〜」
「あと二ミリやねんけどな」
おいおい、勘弁してくれ。
ここで医者の名言。
「ちょっと君、僕の手になって」
学生にピンを持たせてオレの歯を抑えさせ、自分は開いた手で作業しようというらしい。
「よし」
という声が出て、あとちょっとかなと思ってたら、衛生士のねーちゃん登場。
「先生〜、昨日来られた竹田さんが、なんか痛いんで見て欲しいと言ってらっしゃるんですけど」
「え〜!?」
「明日とかは」
「あかんよ、僕、明日も手術」
「でもどうしても見て欲しいって」
「困ったな〜」
困ったのはオレだ!
さっさと続きをやれ続きを!
殺すぞ! 竹田!
再びドリルを口につっこまれ、ようやく歯の除去は完了。
抜歯の最中に麻酔が切れて来て、マジ痛い。
「は〜い、じゃあ薬出しときますんで。今日は麻酔切れたら大変だと思いますよ〜。腫れるのは、たぶん明後日がピークかな。長風呂と激しい運動は控えて下さい〜」
お、終わった。ほんとに一時間かかったよ。
まあその気になってやってみれば、なんということはなかったが、今日は完全に病人気分。
明日は超美形もだいなしのおたふくフェイスになってしまうのか? いやだなあ。