”我は雷神”『マイティ・ソー バトルロイヤル』


「マイティ・ソー バトルロイヤル」日本版本予告
 シリーズ第三弾!

 オーディーンの死とともに、かつて彼とともに宇宙で猛威を振るった女神ヘラが甦る。彼女はソーとロキの姉であり、凄まじい力を誇り、ムジョルニアさえも粉々に砕いてしまう。宇宙の彼方に飛ばされたソーは、闘技場でハルクと再会するのだが……。

 何かと不評だった第二作は、一作目でソーの成長物語を語り終わっていて、エンタメ路線に走るには悪役が顔に色塗った誰も知らない人でパンチ不足であり、『アベンジャーズ』の後始末の話もしないとだし、やっぱりロキは活躍させないといけない……とまあ、あちこち縛りが多すぎましたね。

chateaudif.hatenadiary.com
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 ナタリー・ポートマン以下、地球の学者組をバッサリカットして、舞台をアスガルド他のソーたちの世界にほぼ限定。監督は『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』のタイカ・ワイティティ。これによってダーク、ゴシックなムードを一掃し、やたらとコメディタッチに。
 前作ラストのオーディーンと入れ替わったロキのネタもさらっと拾い(ここの中身がロキのアンソニー・ホプキンスの演技がふざけすぎてて面白い)、オーディーンは地球の老人ホームにいたことが明らかに。そして早々と消滅の時を迎えるのであった。このシーンでもパジャマみたいな格好してるから笑える。
 そして、かつてオーディーンと共に宇宙を制覇しようとしていた長女ヘラ、演ずるはケイト・ブランシェット様が復活し、ソーに挑戦してくる。開始早々、ハンマーを砕かれて去勢されるソー。前作まで「ムジョルニア可愛い!」とか言ってた人たちはどう気持ちの折り合いをつけたのだろうか?

 前作で契約が切れたかと思われていた浅野忠信が帰参していたが(代わりに他の二人は消滅)、強すぎるヘラ様の前に敢え無く惨殺され、なかなか気の毒な感じであった。まったく話題にもならなかったし……。

 ハンマーを無くして宇宙の彼方に飛ばされたソーさんは、コロッセオに駆り出されて、行方不明だったハルクと試合することに。ハルクはずっとハルクの姿のままでそのまましゃべり、ジキルことバナー博士はなかなか出てこない。しかし、やっと出てきたと思ったら、出てこない間にバカがうつったのか、酸素欠乏症にでもなったのか、ギャグ担当の中でもずーっとボケっぱなしで、ひどいキャラになっている……。
 ソーさんは一作目でも一回チンコを無くしたわけだけど、今作はそれを取り戻すのではなく、いやハンマーなしでも俺は俺なんですよ、というスーツやら盾やらを無くしたのと同じ境地に。それに伴い、民を導くアスガルドの王たる資格をようやく手に入れる。
 今回は実姉であるヘラ様が喧嘩強すぎて、ハンマーなしで雷パワーを発揮するソーさんでもやっぱり歯が立たないわけだが、そこで戦って勝つマッチョさではなく別な道を選んでしまうところが肝か。

 一作目ではメインの悪役、『アベンジャーズ』でもメインの悪役、『ダークワールド』でもトリックスター的な立ち位置でメインキャラ……ということで何かと役割の負担が大きかったロキちゃんも、やっと落ち着けた感あり。コメディリリーフしつつ美味しいところを持っていく二枚目から三枚目の間ぐらいのポジションで、悪女キャラっぽいとこもあり。殺すわけにはいかない人気キャラなので、物語の絡み方もこれぐらいにしておくのがちょうどいい。
 が、次の『アベンジャーズ』でまたやらかすことにならないか心配だな……。

 前作までのテイストをぶち壊すのは良し悪しという感じだが、単発ソーシリーズとして一区切りつく三作目ということで、まあこれぐらいはっちゃけるのはありか。まずまず面白かったですね。