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”許されて留まる”『ヒマラヤ』


『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』予告

 ファン・ジョンミン主演作!

 ヒマラヤ最高峰に幾度も挑み続けてきた伝説の登山家オム・ホンギル。学生時代に助けてやったことのある無鉄砲な新人ムテクをけむたがりながらも鍛え続け、ついには新たな世代の登山家として認めるようになる。自らの膝の負傷により、引退の決意を固めたホンギル。だが、その先で悲劇が待っていた……。

 8000m級山岳を制覇した、実在の登山家オム・ホンギルを描いた物語。8000m級山岳は14峰あり、映画はその道のり半ばの頃から始まる。仲間の死体を運んで降りようとした学生登山家を叱り飛ばしたオープニングから数年、新たな8000m級への登頂を企画していた頃、チームの一員としてその時の学生ムテクと仲間が加入してくる。

 確かに根性はあるかもしれないが、その甘っちょろさは山では命取りだ! と怒りまくったファン・ジョンミン、猛特訓を課すのだが、ぎりぎりながらもクリアされてしまう。
 今回のファン・ジョンミン、やってることが山登りなだけクールを心がけているのだけれど、実態としてはやっぱり熱い人情家というキャラ。最初は結構イライラしているのだが、段々と弟分ぽくなってきた彼が可愛くなって、放っておけなくなってはいつも連れ回すという格好に。

chateaudif.hatenadiary.com
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 韓国映画なので、基本はウェットかつど熱くメンタル重視な話……なのだが、そうは言っても実話ベースなので、あまりその範囲も逸脱できず。韓国映画の割には、むしろ淡々とした部類、ファン・ジョンミンだけど狂人度は低く抑えた部類になっているという……。
 『エベレスト3D』ではないが、やっぱり山はむごく恐ろしい場所であり、主人公曰く「山を征服するなどおこがましい。我々は山に、1日過ごすことをやっと許されるだけである」というテーゼを貫く。
話の基本形はスポ根もので、引退の迫ったベテランが自らの進退の際を悟り、自ら育て上げた有望な後継者に託す……という綺麗な物語があるのだが、ああ、山は無情、後輩であるムテクが先に壮絶な死を遂げるのであった……。
 老いも若きもヒマラヤの猛威の前では大した差ではなく、一つの判断ミス、わずかな天候の変化が生死を分けてしまう。

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 そして、かつて仲間の死体を運ぶことにこだわったムテクをあれだけ叱責した主人公が、今ここで彼の死体を回収すべく登山を計画する……。幾度も繰り返してきた登頂では、それぞれ登山用具のスポンサーがついて、半ば彼らのために登るようなことになっていたのだが、登頂直前で死体を拾って引き返すという、全然宣伝にならない登山なのでそれらもなし。あまりに無謀かつ今までと言行不一致すぎ、さらに弟分だけ贔屓しすぎ問題まで浮上し、全然メンバーが集まらない。そもそも自分が引退発表したので、それまでの仲間もみんなカタギの仕事についてしまっているという……。さあ、この逆境の果ての結末は……?

 実際のオム・ホンギル氏の偉業は、日本にはあまり情報が入ってきていないようで、文献なども翻訳されていないようでもったいない。さすがに実話ならではの重みがあり、しっかりと堪能できました。