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”殴る大捜査線”『ベテラン』

映画


 ファン・ジョンミン主演作!


 広域捜査隊のベテラン刑事ソ・ドチョルは、正義感が強いが喧嘩っ早い男。映画製作の取材に協力し、呼ばれたパーティの席上で、大財閥の3世であるチョ・テオに紹介される。親と企業の威光を笠に来た彼の振る舞いに、薬物と犯罪の陰を嗅ぎ取ったドチョル。そして、テオの会社でドチョルの友人であるトラック運転手が自殺未遂で意識不明に……。


 この人も人気出たよなあ。今年、『傷だらけの二人』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150429/1430318133)『国際市場で逢いましょう』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150428/1430215093)に続いてもう三本目だよ。キャラクターはまあ似たような感じなので、少々食傷気味でもある。今作は殴る方に手の早い刑事役。
 冒頭はチームの女刑事と金持ちカップルのふりをして高級車を買い、自動車窃盗団に狙われていると知りながら囮を務める。この辺りはほぼ本編と関係なしのキャラクター紹介で、独立した部分になっている。窃盗団を捕まえ、彼らをまた囮にして取引先のロシア人をまとめて逮捕! 『ベルリンファイル』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130719/1374220702)のリュ・スンワン監督の国際色が光る。こういう組織犯罪を担当するチームなのね。


 が、メインの話が大企業の賃金不払いとそれにまつわる自殺なので、ファン・ジョンミンは自殺を図った男が友達なのにいきなり管轄外という憂き目に……。同時にチームの他の人たちも全然話に絡まなくなり、単独で逆境に挑まなければならなくなる。


 企業の悪辣さプラス、社長のバカ息子の人間性ウンコっぷりが合わさり、事態はかなり悲惨なものになり単独捜査は圧力もあって当然難航するのだが、その分、色々と脇も甘いので付け入る隙も出てくる。バカ息子がMMAの練習をしているシーンがあり、コーチ兼ボディガードの男と戦っているのだが、攻めてばかりでガードもしないし寝技のディフェンスもしないのな。怒らせてタップさせられたのを根に持ち、騙し討ちのヒールホールドで足首を折ってしまう。同じルールの中で競う、ということができない精神性が露わになっていて、そこが付け込まれる隙になる。
 そこでお目付役として、従兄弟のユ・ヘジンが付いて手綱を握って尻拭いしている。この人も金と根回しで解決する大企業のスタイルを体現している人で、嫌な感じに有能なのだが、実はバカ息子や父親の社長が、微妙に彼の重要性を理解していないあたり、大物の慢心を表していて面白いところ。揃ってノーガードなのだな。彼を切り捨ててクライマックスに不在にさせたことが、中盤にもらったボディブローのように効いてくるのである。


 中盤、悪役の悪辣さを描くのにかなりの時間を割いていて、序盤の軽いテンションとギャップがあるのが若干もどかしい。チームのメンバーが活躍しだすのが完全に終盤になってからだから、コメディ的なノリを全編通していることと、溜めて溜めての最後に来るカタルシスの食い合わせがちょっと悪いような気がする。
 しかし、これは本国ではバカ当たりだそうで、良くも悪くもこの軽さがうけたのかな。『踊る大捜査線』的なノリとして……。エンタメとしてのテンポとそつのなさは『シュリ』で初めて韓国映画見た頃と隔世の感があり、リュ・スンワン監督のアクション演出が光るところ。


 韓国語を喋る謎のロシア人のくだりなど微妙に意味不明で、ほんとはもっと海外で撮ったりしたいんじゃないかと思うのだが、シリーズ化するのがちょうどいいぐらいの軽い映画でもあるし、『ベテラン2』では今のチームでヨーロッパに乗り込んだりしても面白いんじゃないかな、と思いました。

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