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”乗り合い馬車は人が死ぬ”『悪党に粛清を』


 マッツさんのウエスタン!


 1870年代、元兵士のスウェーデン人ジョンは、新天地アメリカへ出稼ぎに出て、7年かけてようやく家と土地を手に入れた。妻と、赤ん坊の頃から会っていなかった息子を喜び勇んで呼び寄せるジョン。だが、幸せも束の間、乗り合い馬車で乗り合わせた男によって、妻子は惨殺されてしまう……。


 デンマークから出稼ぎに来た元兵士マッツさんが、土地と家を買って妻子を呼び寄せる……んだけど、乗合馬車に同乗したムショ帰りの男二人に、その妻子をさらわれてしまう。馬車を放り出されたマッツさんは必死に追いかけるんだけど、息子は馬車から捨てられ、妻も犯された上で殺されてしまっていた……。
 怒り爆発のマッツさん、御者もろとも全員を射殺! 主犯の男には何発も何発も撃ち込む……! あれっ、もうやっつけてしまったよ。


 序盤でもう仇を取ってしまうので、物語の熱がバッサリと途切れてしまう。むむむむむ、ドルフさんの『レッド・リベンジャー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110913/1315892306)を思い出してしまったが……?
 ここから、この殺されたレイプ野郎の兄と妻が登場し、その仇を探すターンに突入! 街の人を見せしめに殺しつつ犯人探し。このあたりではマッツさんは町外れに住んでるので、自分が追われていることになかなか気づかない……。


 美術や撮影などなかなかいい雰囲気は出しているのだが、話運びがたどたどしく、中盤はぼんやりとした立ち位置のマッツさんが延々出ているので、少々間延びしてしまっている。必死になっているのは悪役だけという状況で、実はエヴァ・グリーン演ずる殺された男の妻も、まあマジに悼んでいるかというとそうでもなかったりするのだな。危機感のなかったマッツさんは励ましに来ていた兄ちゃん共々保安官に捕まって引き渡されてしまい、大ピンチに……。野晒しで吊るされて拷問されるのだが、仇じゃないし漫然と牢屋に放り込まれていた兄ちゃんが脱出して助けてくれる。うーむ、こりゃあ頭が上がらなくなるな……と思ってたら、その兄ちゃんは代わりに捕まって惨死……。こうして再び仇打ちが始まる。


 こうして書き連ねてみると回りくどいようだが、憎しみと復讐が後を引いてしまい、いつまでも追いかけてくる感覚というのは、ウエスタンの定番でもある。
 一方、エヴァ・グリーンの方はというと、旦那の兄の方に「おまえはオレの女になるべきだ!」と迫られ犯されてしまう。設定はどうか知らんが、まあまあ歳もいってるのに「姫」とか呼ばれてるのが、この男の方の歪んだ執着心とかフェティシズムを表現しているようで超キモいぞ! 口が利けないという設定だが、憎悪と怒りを燃やすのを目つきで表現するエヴァ・グリーン、ナイス! しかしもう少し暴虐な活躍をしてほしかったところだ。


 おばあさんを殺された雑貨屋の少年とか、葬儀屋やってる村長とかもなかなかいい味を出してる……と本来なら思うところだが、良くも悪くもマッツさんが出ずっぱり過ぎて影が薄くなっているのだな。こうやって見ると『荒野はつらいよ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20141102/1414930770)はキャラの配置のバランスなど、西部劇のフォーマットを崩さずにかなり頑張っていたな……。


 クライマックスも大爆発と言うより、話の流れ的に寂寞感漂うもので、これはこれで今回の話に合っていて良かったですね。真面目に作ってあっていい雰囲気出ているのだが、飛び抜けてフェティッシュな感じもなく、若干物足らないが……。

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