”進むべき道”『NY心霊捜査官』


 エリック・バナ主演作!


 動物園でライオンの檻に子供を投げ捨てた母親。妻を殴打する男。まったく関連のない二つの事件を担当したNY市警のサーキは、不思議な共通点があることに気づく。そして、事件の影に見え隠れするフードの男と、介入しようとする神父。自らの持つ「勘」に導かれ捜査を進めるサーキだったが……。


 ピアノが勝手に鳴る予告編は妙にゴシックな雰囲気があったのだが、冒頭のイラク戦争を皮切りに、刑事が主演の謎解きものに突入するからちょっと驚き。勘の働く主人公が、オカルト臭の漂う事件に自ら首を突っ込むのだが、断片的な情報を整理してバラバラに起きたかに見える事件にある共通点を見出していく……という、謎解きの構造が律儀に守られている。
 監督は『エミリー・ローズ』のスコット・デリクソンで、かの映画を実録もののように仕立て上げたのと作りが似ているな。


 謎解き仕立てということでかなり娯楽要素を意識していて、情報を追って真相に迫っていく追体験的感覚に加え、やたらとカッコいいカットがあったり、ライオンが襲ってきたり、妙にスタイリッシュなナイフバトルがあったりと、色々と盛りだくさんな内容に。そう考えると、バンバン入る動物の死骸やら人体損壊描写も、作り手的には「サービス」なのであろうな。


 刑事である主人公が、次第に自らの「霊感」の存在を自覚していくのだが、導き手であるのがやさぐれた神父。ヤク中の過去を明け透けに語り、再び溺れないために酒とタバコを嗜むという生臭系。その使命は悪魔祓い……! このキャラクターのおかげで、ニューヨークの凶悪犯罪ものだったはずが急にお話変わっちゃったよ!という違和感を抱かずに済む。悪魔祓いのレトロなイメージを払拭し、現代の犯罪もの映画の文法でまとめることに。
 が、最初と最後で「実話です!」と言い張っているのに対しては、「わっはっは、嘘ばっかり」と笑い飛ばしてしまいたくなるような、楽しく派手な話になってしまったのも間違いないな。


 しかし、途中まではかなり面白かったのだが、やっぱり悪魔祓いが始まると、どうもありきたりになってしまって退屈してしまった。だいたい、悪魔に憑かれているのもむさ苦しい元兵隊さんなので、痛ましい感じが薄いしな。たまたま来た人に取り憑いただけとはいえ、幼女をいたぶるばかりでなく、屈強な男に取り憑いてアクティブに悪魔降臨の作業をして回る、というキャラはわりと面白かったようにも思うが。

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