”我等は不死なるもの"『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(ネタバレ)


 シリーズ第二弾!


 シールドに加わり、フューリーの指揮のもとアメリカを護るための活動を続けていたキャプテン・アメリカ。ブラック・ウィドウらと組んでの共同作戦として、海賊に奪取された船舶の奪還ミッションに参加する。作戦を離れて行動するブラック・ウィドウの行動に不審を抱いたキャップは、フューリーにそのことを問いただすのだが……。


 『アベンジャーズ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120819/1345351121)を経て、トラウマを背負っての『アイアンマン3』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130502/1367490315)、主犯格を引っ張って行った『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140211/1392122824)と、それぞれあの事件の後に違ったものを背負ったわけだが、もう一人キャップさんは、その行動範囲の狭さと故郷がなく行き場がないゆえに「その場」に残り、「シールド」の一員となり、組織を背負うことになる。いやまあ、最も組織人向きの人ではあるし、苦労も多いだろうけど安定してるし、まあまあ美味しいよね……と、思っていたのであるが、実はこれこそが最大の貧乏くじであったことに気づいていた者は誰もいなかったのだ……。


 冒頭、海賊に襲われた船の奪還ミッション。こういう、全体のエピソードから独立したアクションでつかみをする構成ってのがすごく好きなんですね。で、なおかつ実は後々の展開にも深く関わっていたことが明らかになるのだから、言うことなし。
 そしてここにGSPこと、前UFCウェルター級王者、ジョルジュ・サン・ピエール出演! 海賊のリーダーとして、キャップさんと一騎打ち! いや〜、チョイ役かと思ったら、今回のヴィランなんじゃないの、という勢いで攻め込んだから驚いたわ。Twitter見てたら全然格闘技観ない人が「あいつ強え! 何者!?」と興奮気味だったのに対し、mixiで格闘技ファンのはずの人がなぜかGSPだと気づいていなかったという、不可思議な温度差(笑)。
 と言いつつ、その後のシーンも含め、総合格闘技的なムーブはほぼなかったな。やっぱり変な「リアリティ」よりも、ワイヤーアクションやバルクールが好きな作り手なのね。正直、『導火線』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110619/1308391012)などにおいても、タックルや関節技など「やりたいから無理に入れてる」感が否めない部分もあったし(だからこそ『特殊身分』でどのような処理がされているかが楽しみなのだが)、『ラストスタンド』等でも散見された下からの腕十字など、いささか食傷気味でもあったところ。でもGSPに関して言えば得意のスーパーマンパンチはきっちり出していたし、その後の「格闘家にでもなれば」のギャグにも拾われてて、いい味を出していたな。


 格闘アクションに加えて、ポリティカルサスペンス風味ということで、現在のアメリカにおける対テロリズムの無人機による先制攻撃という時事ネタを入れ込み、それを推進するシールドと、キャップさんの価値観の対立を描く。『マイティ・ソー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110711/1310294131)での本格登場後もどことなく臭っていたシールドという組織の、アメリカに属するがゆえの力任せの大義からの腐臭、胡散臭さ……。それに対し、基本、組織人なんだけれど、決して迎合しない、古き良きアメリカの正義を信ずるキャップさんならではの立ち位置。


 以前は黒幕っぽい雰囲気を出していたフューリーさんも、『アベンジャーズ』以降は主人公側のポジションに来た感があり、今作でも当初はシールドの正義を擁護するものの、裏では何かきな臭いものを感じていた、という立場に。で、当然その上にまた黒幕が出てくる……ということで、出た! ロバート・レッドフォード! いかにも物分り良さげ、硬軟清濁どっちもOKという顔をした理解ある上司で、フューリーとは「時には躊躇いなき力の行使も必要」という哲学を共有している。『オール・イズ・ロスト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140330/1396163454)での鬱憤を晴らすようにしゃべりまくり、文民だけど武闘派を盛り立てる役回り……かと思いきや……。『大いなる陰謀』とかと同じいつもの演技なのに、やることがひどいレッドフォードさんが最高。フューリーまでもが殺されてしまう!
 まあさすがにサミュエル・L・ジャクソンが契約切れのはずがなく(『ソー2』のタダノビーやルッソさんとは違うのだよ)、実は生きているわけですが、あわやという緊迫感はありましたね。


 さらに前作『ファースト・アベンジャー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111016/1318775742)のネタを拾い、かつてのヒロインも再登場。前作の因縁を踏まえ、かつての友、かつての敵も漏れなく登場……! いや、タイトル通りのウィンター・ソルジャーが出て来て対決するのは知ってたが、ヒドラまで出てくるのね。前作の時のヒドラは「しょぼい悪役だったなあ、化石だね」と思ってたんですが、キャップさんが凍りついてる間にめちゃめちゃ増殖してたのね。バカにしてすいませんでした! ロバート・レッドフォードまでが「ハイル……ハイドラ……!」とか言って、アップになってガクッとなっちゃうあたりで、段々とカッコ良く見えてくるのである。ハイドラとヒトラーの語感がちょっと似ているところもまたポイントなのであろうか。いや〜、実在のネオナチは、今や国によっては議員や政党まで立てているわけだが、ぼんやり構えてるとこういう狂人たちに乗っ取られてしまうわけだ。
 トビー・ジョーンズのキャラも、まあ冷静に考えればあれだけの出番のためになんという大げさな……という感じではあったが、あの数分ですでに『トランセンデンス』を先取りしてしまったね。
 それに対し、強いけれど生身の男一匹に過ぎないキャップさんが、実直そのものの大演説で反撃するところも良し。正義の組織に属しているのではない、一人一人が善や良心を問われているのだ……。


 『アベンジャーズ』でも飛んでたヘリキャリアが、豪快にも三機も飛んでしまい、キャップさんがファルコンと共に孤軍奮闘するクライマックスも、いちいち他キャラに目配せする必要がないのでテンポ良し。そしてウィンター・ソルジャーとの悲しき決戦……! ガンカタも出た!


 まあこんな感じで、いちいちネタを拾うだけで大変な物量で、二時間越えも納得の出来。『アベンジャーズ』よりも面白かったんじゃないか。キャップさんの能力的にも立場的にも目の前のことを一つ一つ片付けて行くしかない制約が、仲間との協力描写をより引き立てた感もあり。盛り込んだけれど上っ面だけにならずキャラも掘り下げ、よくもまとめたものですよ。


 さて、次は『ギャラクシー』か。まだまだ続くなあ。

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