”執念の落とし子”『ラン・オールナイト』


 ジャウム・コレット・セラ監督!


 ブルックリンを縄張りとする組織の殺し屋であるジミーだが、すでに年老い、家族にも疎まれて酒浸りの日々を送っていた。ある夜、息子マイクを狙う男を射殺するが、それは自分が仕えてきたボスであり親友であるショーンの息子だった。報復のため、マイクとジミーを共に殺すと宣言するショーン。街中が敵になり、父子に迫る……。


 『アンノウン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110508/1304842033)とか『フライト・ゲーム』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140922/1411365704)とか、演出はいいけど話がダメダメ過ぎて大損ぶっこいてるような映画の続いたセラ監督。またリーアム・ニーソンと組んで、今度はシンプルに一夜の攻防戦を描く。「衝撃のラスト」とか余計な引き文句もないので、その演出力を堪能できることであろう……。


 ……と言いつつ人間というのは贅沢なもので、あまりに筋がシンプル過ぎてももうちょっと捻った方が面白いんじゃないか、とか言い出してしまうのだな。


 まあスタイリッシュで良くできてると思うが、ダメすぎかつ犯罪者の人殺しがちょっといいことしたら許されるみたいな話で、こういう父親の贖罪ものには少々食傷気味なのである。アル中も緊迫してきたら都合良く治るしな。しかもリーアム・ニーソンということで、もう何本目よこれ……と、少々飽きがきたところ。そういう贖罪話になるのかと思いきや、その性から逃れられず狼と戦ってしまう『THE GREY』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120824/1345735585)は意外に筋が通ってたし斬新だったような気がしてきた。
 このネタならやっぱり『ミスティック・リバー』が群を抜いて良かったよなあ……。ああいう映画はもう作られないのかね……。そう言えば『美味しんぼ』も30年かけてやっと和解したのにね(関係ない)。


 殺し屋役で登場するラッパーのコモンさんはなかなか良かった。中盤で一敗地に塗れ負傷するが、クライマックスでもちろん再登場。古馴染みでいちゃいちゃするリーアムと大ボスのエド・ハリスのウェットさと対照的に、無機質に迫ってくるキャラが良し。構成的には、大ボスのエド・ハリスを倒すところをクライマックスに持ってきても良かったと思うのだが、それは敢えて先にやってしまい、依頼主を無くしてなお襲ってくる怪物的な存在に昇華させる。かつての殺し屋リーアムも、きっとこういう存在だったのだろうな。ぎりぎりのところで過去の自分が追いかけてくる。息子を奪って人生のツケを払わせようとする……。
 『ウルトラセブン』の最終回、コントロールしているゴース星人を倒したのにも関わらず、炎上した基地から姿を現しなおも戦いを挑んでくる改造パンドンみたいで格好良かったですね(どういう例えや……)。

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