”韓流スターはつらいよ”『ローラーコースター』


 大阪アジアン映画祭2014、八本目!


 主演作がなぜか日本で大ヒットし、晴れて韓流スターの仲間入りを果たした若手スターのマ・ジュンギュ。しかし、アイドルとのスキャンダルが発覚し、活動中の日本から韓国へと急遽戻ることに。飛行機嫌いで潔癖性の彼だったが、ビジネスクラスではファンに注目されてしまい……。


 ハ・ジョンウが監督業に進出した映画。この日は『甘い殺意』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140401/1396347059)に続き、コメディを続けて観ることに。フライト中の飛行機の中の話で、今年では『アイム・ソー・エキサイテッド!』(未見)みたいな映画、とも聞いておった。


 パイロット、フライトアテンダントなど、仕事中につき「外面」を意識しなければいけない飛行機側のスタッフと、単にプライベートである乗客、そしてプライベートであるにも関わらず有名になりすぎたゆえにもはやそんなものはない主人公の韓流スター。三者三様の表と裏が描かれ、それが飛行機が着陸できないという事態において必然的に反転して行く。
 スキャンダルまみれでパブリックイメージの崩壊危機にさらされたスターが、それでも失礼かつ図々しい乗客らに対してそのイメージを守ろうとする姿には同情を禁じ得ないのだが、もちろん映画であるがゆえに、その表情から彼の内心は透けて見える。もう放っておいてくれ、一人にしておいてくれ、せっかくビジネスクラスなのに……。潔癖性であるところも災いし、ストレスはどんどん積み重なって行く……。
 芸能人あるあるネタも交えつつ、高慢なスターと同情すべき一人の人間の間を行き来するような主人公に対し、徹底的にマイペースぶりを崩さない乗客たちと、バックヤードではゴシップに興味津々の乗務員のギャップが面白く、この日も会場ではどっかんどっかん笑いが起きておったよ。思った以上に面白かったな。


 さらに、アナウンスをするばかりのパイロット二人も、コクピットで怠惰っぷりを発揮し、これは『フライト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130325/1364037128)なんかも思い起こさせたところ。後日、マレーシア機の行方不明事故の報道の際、副機長が乗務員を操縦室に入れて写真を撮っていたという話が流れていたが、思わず「普通じゃないの?」と思っちゃったね(映画の話ですから……)。
 飛行機はまさかの墜落危機に陥り、ついにストレスがMAXに達した主人公は暴走を開始。今作も繰り返しのギャグが多めで、基本的なところをしっかりと押さえているな……。同じ事を何度もやられる、というのがイライラしている人に対しては最もダメージが大きいのだよ……。
 全てが終わった後に残るのは徒労感のみなのだが、それでもなお変わらない主人公に、呆れつつもどこかほっとする感じも悩ましい。一応ハ・ジョンウブランドなんだから、これも日本公開しないかな……。

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