”そこに映るもの”『メイジーの瞳』
『キッズ・オールライト』のスタッフが結集!
6歳のメイジーは両親が離婚し、それぞれ親権を持つ彼らの家を十日ごとに行き来することに。だが、ロックスターの母とアートディーラーの父は互いに留守がちで、次第に世話もままならなくなってくる。父と再婚したベビーシッターのマーゴ、母の再婚相手のバーテンダーのリンカーンに面倒を見てもらうメイジーは次第に彼らに懐くのだが……。
両親が離婚し、それぞれに継母、継父がついて……というお話では『水曜日のエミリア』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110708/1310031953)という秀作があったが、かの映画が継母からの視点で悪戦苦闘する姿を描いていたのに対し、今作は徹頭徹尾子供の視点から離婚とその後の生活を描く。
海外出張の多い夫と、ミュージシャンで全国ツアーに出て行く妻ということで、協力しあえてる段階ならまだしも、すれ違いが増え喧嘩も多発し、とうとう離婚を迎えるにあたって娘のことはどんどん置き去りに。しかしそれぞれ自分が忙しいのはわかっていて、なおかつ仕事を犠牲にするつもりもない。親権を分け合い、10日ごとに娘が行き来する中で、案じた一計は……。父親の方は娘の子守りをしていた若い女と早々と再婚、それを見て母親の方も若い男と再婚する……。共に色恋に迷ったわけでもなんでもなく、「子供のためを考えて」世話をする人間を用意するための結婚。……なんだけど、そうして人様を利用するためだけの行為の身勝手さは、じきに見透かされてしまうのだよね。
まだ6歳の幼女であるメイジー自身にはそんなことはわからんのだけど、時に置いてけぼりにされ、時にたらい回しにされる彼女の瞳……すなわち今作のカメラにはすべてが映し出されているのだ。
そうした幼女の瞳は目の前のもの全てを映す鏡のようなもので、まだ自我の発達していない彼女は決して両親を非難はしないものの、だからこそそこに対する大人が厳しく自身に問わねばならない。
そんな自分の都合ばかりの両親の間で、ついに放置プレイされるメイジーたん、超可哀想! 彼女の運命やいかに、というところで、実際に身体を張ったのは継父&継母でありました……というお話。いやはや、二人とも何気に子供好きすぎで、そういう意味では「正しい人選」であったのだなあ。アレクサンダー・スカルスガルド継父がバーテンダーだが面倒見よすぎな人で、ダメママにずばり説教を食らわす!
『キャリー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20131203/1386075969)の束縛しすぎな母親よりは百倍ましだったジュリアン・ムーアだが、やっぱり根がいい加減な人は子供に対してもどこかでいい加減になるのだな。父親もそうだが、結局「実の親だから」ということが根拠のない自信につながっていて、それが人に対して甘え、自分に対しては甘い姿勢につながっていく。親とは、血のつながりがあるから親なのではない。務めを果たしてこそだ。
相変わらずバーテンダーなスカルスガルド君と、売家を借りてきたジョアンナ・ヴァンダーハム継母たんとの暮らしということで、結婚は解消しないままあっさりできちゃうあたりいささかいい加減だなあと思うし、先行きは全然見えないし不安定だが、それでも少女は選び、前へ進む……。それもまた、尊重されるべき一つの家族の形だ。
メイジーたん役の子がまばゆすぎで、終盤のスク水&ツインテールは衝撃的なまでに狙いすぎだ! 継母たんの水着も微妙にエロいのですが、それを向こうに回して……。振り回されっぱなしだった彼女の自我の芽生えを描き、ラストはダッシュで締めるこの躍動感は、『仄暗い水の底から』を思い起こさせましたね。
親の役目を果たせないということは、そんな彼女の成長を見守る機会をも失うということで、そりゃあもったいない、もうちょっとしっかりしようよ、と思うのでありました。
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