"ギャングはオレが倒すウホ!"『L.A.ギャングストーリー』


 ルーベン・フライシャー監督の三作目。


 1949年、ロサンジェルス。街を牛耳り、売春やドラッグも意のままに操るミッキー・コーエンは自らを神と称し、さらに勢力を拡大しようとしていた。その悪行についに怒りを爆発させたジョン・オマラ巡査部長は、上層部からの特命を受け、彼を含めて6人からなる、バッジを持たない特殊チームを結成する。その目的は、法ではなく力によってギャングを倒すこと……!


 この時代のLAのギャングと警察を描くのに、なんでこんな正義の味方ごっこになるの?とちょっとびっくりした。役者陣はみんな頑張っているのだが、話がしょぼすぎで、嘘っぽい正義感に燃えるジョシュ・ブローリンを見ているとどんどん冷めてきた……。対するライアン・ゴズリングが見せるやる気なさも、ああ、後でデレて仲間になるパターンでしょ、というのが丸分かりで……。
 エマ・ストーンの横乳は良かったなあ。そしてスリットからのぞく太ももね。しかしこの女も薄っぺらいキャラであった。ゴズリングとの顔合わせての阿吽の呼吸で何か語ってるように見えるが、内実は何もない。キャラクターの心理も背景も描かれないので、ゴズリングがいつもの「なんかもてそうな感じのオレ」演技を見せるあたりも、役者のイメージに依存してしまっている。嫌いな映画だが『ラブ・アゲイン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111202/1322824160)などではスティーブ・カレルがあの嘘くさいまでのイケメンオーラに反感を抱きながらも徐々にその説得力により倒されるあたりが、丁寧に見せられていた。ところがこのエマ・ストーンが出会って5秒で合体するあたりには、何の説得力もないのだよねえ。ショーン・ペン演ずるギャングも記号としての横暴な悪役を背負わされているだけなので、女がそこから離れるにあたっても記号でいいということなのだろう。


 演技でなんとか保たせているが、かといってスター映画という程のメンツでもないし、アンサンブルの妙味が出てくるかというとそれもない。皆、書き割りのようなキャラをバラバラに演じているだけだから、ロバート・パトリックも個別では格好良く見えるが、それも虚しく浮いている。


 まあ時代劇みたいなもんで、時代考証とか適当で、かっちょいい勧善懲悪ストーリー、骨太の男、イケメン、いい女、渋い悪役、いいじゃないですか!そういうものを見せたい!ということなのだろうが、そこで見せるのがスローモーション多用のマトリックスもどきみたいなカッコつけただけの銃撃戦であったとは……。作戦も知恵も何もなく、単に力押しで、しかも人数の少ない方がなぜか銃弾に当たらず勝つという、ダメなアクションの見本のような展開。撃ち合いでも単調なカットの切り返しが続くので、どんどん眠くなる。
 で、主人公のバカさ加減も最後までずっと一緒なんだよな。最後の殴り込みシーンも、最初と同じことをただ繰り返してるだけだし、全身をさらけだしてメガホンを吹かすのには仰天。撃たないギャングも馬鹿過ぎ。これもかっこいいつもりなんだろうか。
 ジョシュ・ブローリンのマッチョな格好良さが、最後の殴り合いの馬鹿馬鹿しさや顔とあいまってキング・コング的で笑えるが、それならやっぱり滅び去らないと! 滅んでこその美学なんですよ!


 アクションが下手糞でエモーションが幼稚なんだから、盛り上がるはずもない。全てがペラペラで幼稚で、いい大人が作ったものとは思えない。まさか後半で熟睡させられるとは思わんかったわ。『ピザボーイ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111205/1323078058)はまだ寝たの前半だったのになあ。
 締めも取ってつけたような終わり方で、本気で作ってるように見えない。まるで製作委員会方式で予算とキャストだけは揃えたけど、いい加減な脚本と部分的にしかやる気のない監督しか用意できなかったような映画であった。自分の好きなとこ、やりたいとこには力を入れたけど、あとは単に素材を並べただけのようで、全然真剣味が感じられなかった。


 『ピザボーイ』の時も思ったが、やっぱり『ゾンビランド』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111018/1318932217)のあの四人の奇跡的なケミストリーはフロックであったか……。とりあえずこの監督は今後、地雷認定で。

ゾンビランド [Blu-ray]

ゾンビランド [Blu-ray]

S.H.モンスターアーツ KING KONG The 8th Wonder of the World

S.H.モンスターアーツ KING KONG The 8th Wonder of the World