"稲妻のもみあげを持つ男"『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』


 ダニエル・ラドクリフ主演作!


 妻と死に別れ、孤独に苛まれる弁護士アーサー。上司から寒村の邸宅に行って、死んだ女主人の遺言状を探し出すように命ぜられる。ロンドンを遠く離れて向かったその村では、誰も協力的ではない。一人、屋敷に入ったアーサー。だが、誰もいないはずの庭に、黒衣の女が立っているのを見てしまう……。


 ハリー・ポッターの新作ということで、観に行ってきました! 今回は魔法を封印しているという設定で、杖もメガネも無し。さらにせっかく結婚したロンの妹も、出産の際に亡くなっているというヘビーな状況。額の稲妻の形の傷も治癒してなくなっていたけれど、代わりにもみあげを鋭角の稲妻型にカットしているあたりに自己主張を感じましたね。
 職業は弁護士だが、父子家庭の維持であっぷあっぷなのかクビ寸前。妻の死から何年も経ってるが全然立ち直れていない。ど田舎の洋館に書類整理に行くが、そこはある事件のあった場所で……。


 潮の満ち引きで道が閉ざされる島と、洋館のロケーションは最高で、間違っても足を踏み入れたくない雰囲気がプンプン。入った瞬間にホラー映画のお約束フラグが立ちまくること請け合い。果たしているはずのない人影がチラチラと姿を見せ、物が急に動いたり、おかしな音がしたり、背後に誰か立ってたり、古典的っちゃあ古典的なショックの数々が! ありがちではあるんだが、こういう単純な脅かしのテクがやっぱり一番効果的だったりするのだよね。ペアシートで見てたんだけど、「一回、すごいビクッ!ってなってたよね」と後で言われました(笑)。


 洋館の中だけかと思いきや、近場の村にまで出没してくる黒衣の女の跳梁跋扈ぶりは結構強烈で、完全にモンスターと化しておる。子供を操って自殺に追い込んでしまうのだけど、ほとんど自ら手を下してるに等しいレベル。狙うのは子供だけなので、洋館に入ったハリーは脅かされるだけで痛い目にあうことはないのだけれど、代わりに村人に「あの女を呼び起こした!」と白眼視される羽目に! 村人はまあ巻き添え食ってるだけなので(『エルム街の悪夢』みたいな過去はない)、よそ者が余計なことしてるのはそりゃ困るわな。で、うっかり息子を呼び寄せてしまってたハリーは、狙われるのを阻止するために黒衣の女の怨念の元を断とうとする。が、「亡霊の無念を晴らす」という行為を、共感もなく利己的な動機でやろうとするあたり、やっぱり上手く行くわけがないのであった。


 なぜハリー・ポッターが来たら「彼女」が動き出したのかとか、解決編となる部分を覆すロジックがなかったりとか、もうちょっと論理性を味付け程度にでも入れ込んでくれたら、よりラストは良かったかもしれない。『リング』や『スペル』と比較すると弱いんだよな。ドラマ性の薄さも合わせて、クリーチャー映画のような味わいのホラーになってしまってたのは、ちょっと目指したものとは違ったのではないか……。

黒衣の女 ある亡霊の物語〔新装版〕 (ハヤカワ文庫NV)

黒衣の女 ある亡霊の物語〔新装版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ハリー・ポッター コンプリート セット (8枚組)(初回生産限定) [Blu-ray]

ハリー・ポッター コンプリート セット (8枚組)(初回生産限定) [Blu-ray]

スペル Blu-ray

スペル Blu-ray