"枯れ木に花を咲かせましょう"『ゴティックメード 花の詩女』


 永野護総監督作!


 歴代の記憶を受け継ぎ、人々へ語り伝えながら都を目指す旅をする「詩女」。新たな詩女となったベリンの旅立ちの日、巨大な戦艦が惑星へと舞い降りる。戦艦の主、ドナウ帝国のトリハロン王子は、ベリンを暗殺する計画があること、それを阻止する依頼を受けたことを伝え、同行することに。最初は水と油で反目していた二人だが……。


 『ファイブスター物語』(以下『FSS』)の連載が止まって久しいわけだが、その間作者が何をしていたか、というとこのアニメを作っていたそうである。ふーん、なんじゃこりゃ、『FSS』とは違うのか、別なロボットが出てくるみたいだしな。
 そんな程度の認識で乗り込んだが、オープニングのロゴで星が五つ飛び交い、ご存知、黄金の電気騎士がドドンと出たところで、『FSS』やん!と盛大にツッコミを入れてしまったよ。
 いやいやいや、これは単に会社のロゴである、ということだけなのかもしれん……と思ったが、連載末期(まだ終わってませんが……)ぐらいの絵柄で、背景も人物もまったくそのままだ! チョロチョロする動物に自然派描写に、イケメンと美少女 。飛び出した「ヘッドライナー」という言葉で、はい、世界観同じなの確定〜。


 星団歴の初期にさかのぼり、某帝国の建国前夜のお話。自然派の伝統を伝える詩女と、皇族のノブレス・オブリージュを語るストーリーも、まったくおなじみやん!


 漫画をアニメ化すると、あの絵のキャラクターがどう動くのか、どんな演出をするのか、というところに興味が行くものであり、場合によっては違和感を抱くこともあるわけだが、今作にそれはない。良く言えばイメージ通り、悪く言うと「漫画がそのまま動いてる」ような、大胆さの感じられない作画と演出。止め絵が全然動かず、びっくりするぐらいカメラが動かねえ! メカとか複雑な衣装着た人が、決まった角度からしか見えねえ!
 こ、これはきつい……。『009』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121106/1352115871)と『ダムネーション』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121107/1352261709)観た後だったから余計に……。まあほとんど自主制作のようなものだから、金も人手も全然かかっていないのであろう。時間だけは結構かけたけど、それでも充分ではなかったのかもしれないな……。その点、キャラクターの表情なんかはかなり描き込んであったと思うが、それもデフォルメした表現が多いんで、むしろシンプルなものになっていたね。
 いやいやいや、しかし自主映画にありがちなパターンとして、「最後の見せ場だけ異様に作り込んである」というパターンがあるではないか。ゴティックメード起動のクライマックスは、きっとすごいことになっているに違いない!


 ……結論から言いますと、まあやっぱりそこも大して動いてなかったね……。絵が動かせないから瞬殺した、のではないかと邪推してしまうぐらいに動かなかった。そしてその後に出て来た奴ら! おい! オマエらは戦わんのか!? これ見よがしにチラッと途中でも出て来ておったのに、戦わずに去るのか! その「破裂の人形」は飾りか! ファンサービスか!
 そして異様に手の込んだエンドロールを見て、うーん、もうちょいクライマックスにやっぱりリソースを割いて欲しかったなあという思いでいっぱいになったのでした。


 まあしかし一本の映画として観るとしょぼいが、わかりやすいお話は嫌いじゃないし、永野テイストとファンサービスを楽しむ分にはいいであろう。親子連れが一組だけ来ていたが、子供も全然わからんということはないと思う。温かみのある絵と美術は捨て難いし、絵本感覚で観れば……。しかし漫画で描いたら、たぶん2〜3ヶ月分だったと思うんだがなあ……。