"おなじみ夫婦商店へようこそ"『バイオハザード5 リトリビューション』


 シリーズついに五作目!


 船上での死闘の末、意識を失ったアリスは、謎の施設の内部で目覚める。拷問にかけられる彼女だが、何者かによって施設が侵入を受け、脱出に成功する。侵入者はかつてアンブレラの工作員であったエイダ・ウォン。彼女はウェスカーと共に、今や人工知能レッドクイーンに支配されたアンブレラから離反していたのだった。エイダと共に、外部からの救出チームとの合流地点を目指すアリス。その眼前で巨大施設の正体が明らかになる……。


 回が進むに連れて、新規客のことなど完全に置いてけぼりにしていっているこのシリーズだが、今回もその傾向は変わらず。前作のラストからいきなりスタート! いや、オープニングの逆回しは割合良かったと思うよ。


 さて、このあと予告でもあったホームドラマを経て、囚われのアリス=ミラ様が謎の場所で目覚めるわけだが……なんと今回の舞台設定を開始十分で全部種明かししてしまう! 『キューブ』か『カンパニー・マン』か、というナタリ監督的なセットのビジュアルもSF要素もなーんも活かさず、即いつものドンパチモードに!
 いやあ、なんという清々しさ。ゲームのキャラの登場も含め、「うちは定番メニューしか出しません」みたいなこだわりさえ感じる。「僕のやってるいつものことと、奥さんの大活躍を楽しんで帰ってね!」という、固定客、常連客のみをターゲットにした場末の個人商店のような割り切りっぷりだ!
 でもそれでいいと思います! 才能ってやつには限界があって、人間やってもできないことは一生できない! 出来もしない事を虚勢や大風呂敷広げてやろうとしてずっこけるより、自分の得意なことを例えしょぼくても淡々とやり続ける、愛してくれる人といっしょに! それでいいじゃあないか!


 そんな妄想を巡らしていると、夫妻の側も僕というシリーズ全部観ている常連客を歓迎してくれているような気がして来て、プレミアでミラ様が言ってた「I LOVE JAPAN!」だかなんだかいうのも、まるで僕に対して言ってるように思えて来るのである。会社の近くに、よくいく定食屋あるじゃないですか。別にめちゃくちゃ美味いわけでもなく、もうどのメニューも食べ飽きてるんだけど、でもなんか若くて頼りなくて不器用そうな大将が、カウンターの向こうで一生懸命に代わり映えしないカツ丼作ってて、それをなんでこんな男のとこに嫁いだのと言いたくなるような美人の女将さんがすっげえニコニコしながら差し出してくれてるような、そういう感じですよ。そんなカツ丼を、気がついたらさあ……そう、もう十年も食ってるわけよ! 文句なんて言いようがないよ、もう!


 まあしかし、クエスト、ステージ形式で進む展開は単純なだけに破綻のしようがなく、3D効果も『三銃士』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111110/1320901456)を経て少々こなれてきたか、非常に自然なレベルに収まっていたので、総合的に『4』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100925/1285385743)よりは買う。クライマックスももう単純にチャンバラ&ステゴロということで、文句なし! 別にすごいことなんて期待してないから! ミシェル・ロドリゲスも冒頭で死んだかと思ったらまた復活ということで、壮絶大暴れであった。いや、この人は何だかんだ言って毎回死んだらいいと思いますよ。前作でフラストレーションたまったギロリーさんも今回は暴れてくれたし。


 オレ的ゲームのイチオシキャラであるエイダさんも、ちょっとリー・ビンビンでは可愛すぎる感じであったな。しかししゃべり方とかレオンに呼びかける時のイントネーションとか、ゲームそのままでドキッとしたとこもあり、おなじみフックショットも出るし、登場シーンでのナイフと銃の突きつけ合いはゲーム版4へのオマージュと、あ〜、もうたまらん! 最近ゲーム版6の予告の、さすがに歳取ったなあというところも観ていただけに、この年頃のエイダさんはいい。そしてラストのどさくさに紛れてふともも触るレオン! ゲームじゃいっつも袖にされてるけど何だかんだ言って彼女に惚れてる彼が、ささやかなリベンジを果たし、ちょっぴり報われた瞬間のように思えて、オレは猛烈に感動したね。ありがとう、ポール・W・S・アンダーソン! 今回は嫁も脱がしたし、OK! そろそろ母性を強調しだしたあたり、年齢も感じつつあるのだろうなあ、と思うが、そこらへん嫁アクションの二大巨頭『アンダーワールド 覚醒』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120302/1330684614)と相似形を描いている辺りも面白いね。


 ミラ様だけじゃなくて全キャラクローンが登場しかねないという異常事態になりつつも、仲間の誰かが入れ替わってるとかそういうトリッキーさとは一切無縁。しかし世界は死者が埋め尽くし、生きている人間の生命も限りなく安くなった世界で、それでも戦うんだ、シリーズが続く限り……という監督とミラの決意、オレは最後まで見届けるぜ!


 さて、今までのシリーズでは奇数作の方が好きだけど、たぶん完結編が『6』なのは少々心配だ……。