”毎朝あがる悲鳴”『50回目のファースト・キス』

 2012年の映画初め! BDで鑑賞。


 観光客と後腐れのない恋愛を楽しんでいた水族館勤めのヘンリー・ロス。ある日カフェで出会ったルーシーと言う女と意気投合するのだが、恋の予感も束の間、彼女が一日で記憶を失う障害を、事故で脳に抱えていることを知る。昨日会った自分の存在も完全に忘れられていた……。彼女を心配する家族の妨害にもめげず、近づこうとするヘンリーだが……。


 『ウェディング・シンガー』に続いてアダム・サンドラーとの共演。キャストに題材から、パッケージング全てに「安定感」が漂う。


 面倒がってその日の恋にしか生きていない男が、運命の愛に出会うんだけど、思わぬ障害が……という展開はこれまた実にありきたり。あとはそこにどれだけひねりを入れていくかなのだが、世が明ければ前日までの記憶すべてを失う、という設定は、ハワイという舞台も含めてストーリーにしっかり合致している。万年気候が変わらないハワイならではの設定で、のどかで人もつんつんしてないし風景も変わらない、そんなロケーションだからこそ、毎朝同じ状況を迎えられる、というストーリーが組める。


 ただ、その日の記憶を全て失ってしまうという設定は、物語作りの題材に過ぎず、実際に描きたいことは、そういうリスクを背負ってでもその人を愛し、受け入れるということ。設定にもストーリーにも厳しい部分と甘い部分が混在しているが、全体としてはぬるい目。ただファンタジックにはなり過ぎないように配慮されていて、この手の定番としての説得力の水準はクリアしている。


 地元のネタや、水族館の動物なども楽しい佳品。アダム・サンドラーの妙な包容力と、ドリュー・バリモアのがさつ一歩手前の存在感が絶妙にマッチし、安心のクオリティを発揮。ファンなら抑えておきたい。『25年目のキス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110607/1307376481)、『遠距離恋愛』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101104/1288796927)などと合わせて。
 さて、これで観てないのは『デート・ウィズ・ドリュー』ぐらいになったなあ。

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