"バスの行く先は地獄、列車の行く先は次の街?"『ホーボー・ウィズ・ショットガン』


 東京はシアターNにて初日に観てきました!


 犯罪組織のボス・ドレイクが牛耳る街にやってきた、初老の男。殺戮と略奪のはびこる街で、男は娼婦を守り、非道の限りを尽くすドレイクの息子を捕まえ警察に突き出す。だが、その警察もドレイクと手を結んでいた。裏切られ傷ついた男は娼婦に助けられるのだが……。


 個人的に『マチェーテ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101117/1289959620)がいまいち面白くなくて、それはグラインドハウスなはずが半端に現代劇になってて雰囲気ぶち壊しなことと、豪華キャストが仇になって見せ場がまとまらず散漫すぎたことが原因であった。が、今作には『マチェーテ』に期待してなかったものがあった、と言うより蛇足だったものがバッサリなくなっていたのである!

 主演がルトガー・ハウアーということで、『ブラインド・フューリー』大好きな僕としてはマストの映画……と言いたいところだが、正味な話、


「たまたま東京に行くことになったので初日の映画が何かないか……おお、こいつを先に見てやれば、さぞ地元・大阪のフォロワーは悔しがるに違いない、フヒヒヒヒ」


……という実に不純な動機で観に行った(冗談ですよ)。


 82分というタイトな構成の中で、主人公の現状からブレイクスルー、結末までをすべて集約……してるんだが、「ホーボー」という主人公のキャラ付けはちょっと弱く、そのバックボーンが描かれないために中盤にかけては少々盛り上がりにくいところもあり。ただそれはこの名前などないような流れ者が一種の寓話的な存在であることを示している。ダニー・トレホの強烈な個性(個人的にはそうは思わないけど)に裏打ちされ一個のキャラクターとなった「マチェーテ」とは違い、ルトガー・ハウアー演ずるこの「ホーボー」はビッグキャストでありながら慎重に強固な個性の確立は避けられている。その境遇はありふれているし、容貌も老いた白人、言うなればホワイト・トラッシュだ。欲しいものは芝刈り機、手に取る武器はショットガン。そう、威力は絶大だが、誰にだって扱えてカッコ良くポンプアクションできるあの武器だ。パーソナリティも乱暴に「昔気質」で括ってしまえそうなもの。言わば誰でもなく、誰でもある存在と言える。


 彼のたどり着いた街は一人の金持ちに牛耳られていて、その息子二人が好き放題。警察も彼らと癒着し、子供も安心して歩けないような暴力がはびこっている。恐怖以上に街に充満しているのはそれに対する諦めの空気だ。やってきた「ホーボー」も、空き缶を集めて回る無力なホームレスに過ぎないし、当初はその空気に迎合し、目を背け、ガラスをかじる。自らも屈辱を受け、埋没する寸前にまで追い込まれる。
 彼は何らかのバックボーンに支えられた超人的存在ではない。それでも、目の前の暴力に対し自らの夢を捨てて銃を選択する。悪党どもの血と内臓が飛び散り、カタルシスはあるのだけれども、いかにも螳螂の斧でもある。だが、それでも立ち上がる。怒りに任せて。


 報復を受けた敵は、どんどん悪辣さを増していく。スクールバスのシーンは戦慄したな〜。あれ『ダーティハリー』入ってるよね。ひでえなこの話、と思ったら、そこも「落とし前」をつける展開がちゃんとあったので大いに納得した。
 さらに、ホーボーの前に立ちはだかる「地獄の死者」のカルト的な風貌と強さ。あれはもはや人間じゃないね。おそらく血の代償と共に契約を結び、本当に地獄からやってきた悪魔そのもので、きっと鎧の方が本体なのだろう。


 その力の前にはホーボーもまた無力であり、ついに追いつめられる。だがその時立ち上がるのは……もちろん民衆だ。我々だ。彼と同じショットガンを携えて。
 ストイックな結末、だがエンドクレジット寸前のサウンドで、すべてを一気に寓話として昇華させる巧みさに陶酔した。ホーボーが次に向かうのは、きっと貴方の街だ。


 筋も『マチェーテ』そっくりなんだが、80年代風の小道具を前面に押し出し、遥かにグラインドハウスらしい映像感覚をものにしているあたりも好印象で、ヒロイン以下のキャストも好演。血や内臓もドバドバ飛び散るのだが、大げさで作り物っぽく、自然と笑いがこみ上げて来る。詰込み過ぎて散漫になった感じもなく、突っ込みどころも多々あるものの統一感のある作り。いや〜、初めて東京で観る映画がこれで本望ですよ僕は!


 そして人生初めてぴあの出口調査に遭遇! 点数は満を持しての99点を進呈! しかしいっしょに観ていたid:m-ism6021氏とid:yosinoteさんは割合普通の評価であった。初日には他のフォロワーさんも多く駆けつけていたようで、さすがは東京というところですな。