”燃えるのか燃えないのかはっきりしろ”『第7鉱区』


 韓国製モンスターパニック!


 東シナ海の第7鉱区。一向に石油の採掘は成功せず、ついに撤収命令が下される。かつて、父をこの海で失ったヘジュンはそれに反発し、本部から派遣されて来たかつての父の親友ジョンマンと共に作業を継続する。だが、ある日、隊員が死亡する事故が起きる。事故前後に目撃される謎の影。そして殺人が……。


 いや〜、結構期待してたんだけど、壮絶にすべったねえ……。


 序盤、きっちり伏線張るのに費やして、後半に怪物登場で大爆発、という構成にしたかったと思うので、「なかなか怪物出て来ないなあ」と思いつつも、見ながらかなり高まっていたのだよね。途中のバイクレースのシーンの背景CG丸出し、風を切ってる爽快感が一切ない映像にはかなりイヤな予感を覚えたけれども……。
 キャラクターの配置がステレオタイプながら多彩で、冒頭の事故を防ぐシーンも彼らが協力しあう感じが面白く、チームワークや人間関係を重視する話かな、とも思わせたのだよね。バーベキューやってるあたりなんかも、これはキャラ付けを兼ねた前振りだな、ということがひしひしと伝わって来たような気がしたんだけど……。


 せっかく怪物が出て来ても、一向にキャラクターも話も動き出さないのだよねえ。意味ありげに散りばめられた伏線が放置しまくられ、それらがまるでディティールとして機能しない。特に怪物のキャラクター付けの薄さが致命的で、毒があるのか、体液が精液に似てるのはなぜなのか、繁殖はするのか、人間を襲って補食するのかどうするのか、知能はあるのか、それっぽい道具立ては並ぶのにその特性がまったく見えて来ない。唯一示されるのは体液が可燃性ということなんだが、それも火がついたと思ったらあっさり消えてしまうのだよね。そのわりに「30時間燃え続ける!」なんて台詞もあったりして、あれは何なの? 燃えた! 火が消えた! ダメだった! でもまた火炎放射器を持ち出して、でもやっぱり全然通じなくて、あの展開いったいなんだったの? おっさん何考えてたの? またここでアン・ソンギさんが無駄にカッコいいのだよねえ。そしてケーリー・ヒロユキ・タガワ似の隊長が、キャラまでケーリーでヘタレだった……。


 もう全編に渡って、怪物の行動も登場人物の心理も全部ロジックがいい加減で、一向にシナリオもつながってこない。主人公も行動力があるのかないのかわからず、恋人がピンチの時は木偶の坊みたいになって、後からいきなりバイクに乗り出したりして、いや〜、そこはバイク使って助けようよ〜と思ってしまったな。登場人物の多くにその時点その時点での意思が見えず、ここは「戦う!」なのか「何がなんでも逃げる!」なのか不明で、恣意的に動かされてるようにしか見えない。


 さすがにクライマックスには手に汗握ったものの、あそこで上着着てしまっててタンクトップだけじゃないのも非常にマイナスだね。ただタンクトップならいいというものではなく、最初は上着を着てるけど、徐々に追いつめられた末の最終戦闘形態としてタンクトップ姿になるからこそ美しいんだよ。タンクトップはただのファッションじゃなく、生身の肉体をコードぎりぎりまで露出し誇示し、生き物としての人間の原始の形に最も近くなるからこそのスタイルなのだ。中盤ずっと上着、いよいよ怪物に対して反撃を開始するその瞬間、出た! タンクトップ! となったら100倍興奮するのに! それがなぜわからん!
 同じように、怪物に肉弾戦挑むのもタイミングが早いんだよね。あんな化け物と生身で戦うというのは、もう万策尽きたか、あるいは逆にそれで倒せるチャンスがあるほどに追いつめた、というシチュエーションだろうと思うのだが、どう見ても怪物はまだ元気いっぱいなのに、他の手段を講じる前に飛びかかってしまうというのは「ああ、こいつこのあと死ぬんだな」というのが見えてしまってまったく盛り上がらない。
 ラストもひどすぎる。掘削機を使うのも、冒頭のシーンでは複数で操作してるのに、最後は一人で使っているし、全然前の描写が機能していない。そして爆発は止めなくていいの……? まあ『逆襲のコークドン』なんて別に観たくないからどうでもいいが……。


 ところで、観ててなんとなく『パトレイバー』の『1』と『3』を思い出したね。舞台設定とか怪物のデザインとか……。主人公がおじ様萌えなとこは『2』か? そんな謎を残しつつこの項終わり。まあそれでも『D-WARS』よりはマシだったかもなあ。

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