"僕たちだからこそ、できることがある"『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』


 一応、マーク・ウォールバーグが踊ってた!


 ニューヨークの平和は、今日もスーパーコップたちの大活躍で守られた? その他大勢の一人である熱血刑事のテリーは対抗心を燃やすものの、相棒のアレンは刑事にあるまじきデスクワーク主義者で、銃も撃った事がない。ようやくパトロールに出かけるものの、アレンの愛車はプリウス……。スター刑事になるチャンスも奪われて腐るテリーだが、アレンの手掛けるビル工事の足場の未届けが意外な事件に発展し……?


 サミュエル・L・ジャクソンとロック様が大暴れのオープニングから、ウィル・フェレルとウォールバーグが登場する前後までがおかしすぎる。基本インテリで眼鏡かけて馬鹿でかいのに妙ににこやかなフェレルと、ちっこくて常に仏頂面のウォールバーグのコントラストは、絵面観ただけで笑いがこみ上げてくるよ。


 ハリウッドの刑事物の定型を皮肉ったような、パロディ的な構造が面白い。 「主役」とその他「脇役」との対比がメインで、これはその脇役の物語。主役になりたくてでかいヤマを取りたいウォールバーグに対して、フェレルはデスクワークをしてたいなんちゃって刑事。主役のスター刑事たちは街を壊しまくり、車を壊しまくり、銃を撃ちまくり、言動も派手で、常に話題性を振りまいて人を惹き付ける魅力はあるのだが、実は目立つ事件しか追わず、その背後にあるものに気づかない。本当の悪は目に見えず……いや、むしろ目に見えるわかりやすい犯罪をスケープゴートにして活動しており、スター刑事も目立つ事件ばかり追う事でそれに加担してしまっている、という構造が見えて来る。最後は色々と勉強になってしまったなあ。目に見える悪なんて大したもんじゃないし、目に見えない悪を撃てるのは地道に活動してる「脇役」たちだけだ、というメッセージは熱いよ。


 ウィル・フェレルは何やってもうまいな。長台詞も歌もどれも見事な出来で、信じられない芸達者ぶり。今回はデスクワークばかりやってていかにも無能な刑事だが、実は色々と才能を隠している人(しかもモテる)。この人を最初に観たのは『奥さまは魔女』のリメイク版だったが、試写会上を埋め尽くしたキッドマンファンやロマコメファンを爆笑の渦に引き込んだ面白さ、オレは生涯忘れないぞ!
 それに対してマーク・ウォールバーグは一本調子で融通の利かないキャラなんだが、これも代表作『ビッグヒット』『ザ・ファイター』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110331/1301579597)に通ずるはまり役なんだよね。その融通の利かなさ故に周囲に利用されたり馬鹿にされたりして、本当は有能なのに能力がスポイルされてしまっている。いいキャラだ〜。


 あまり繰り返しのギャグを多用せず、シーンごとに違う演出で仕掛けて来る。大筋の先の読めなさに加えて、小ネタを大量に盛ってるので、テンポは緩めだが飽きさせない。シナリオも役者の表情づけも情報量が多い。
 大ネタからして、なんでこの題材で刑事物でコメディにしようと思いついたのか、ちょっとステレオタイプを越えた発想で、だからこその新鮮さもありで面白かった。今年の隠れた秀作だな〜。


 今回、初めてシネリーブル神戸に行って、地下の小ぢんまりした映画館なんですが、なかなか雰囲気良かったですね。結構、うけてる客もいたし良かったなあ。

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