"西部の空にUFO光る"『カウボーイ&エイリアン』


 試写で鑑賞。


 荒野で目覚めた男は、全ての記憶を失っていた。右脇腹には覚えのない傷跡、左腕には謎の腕輪……。襲ってきた賞金稼ぎを殺して近くの街にたどり着いた時、初めて自分がお尋ね者である事を知る彼。だが、捕らえられ護送される寸前、謎の光がそらから舞い降りて来る。次々とさらわれる街の人々。男は街の有力者と共に立ち向かうのだが……。


 作り込んでる、とまでは言わないが、西部の風景の雰囲気はなかなか良く出ていて、太陽がやけに暑く空気も乾き切った地で、金が回らず町が荒廃して孤立したらどうなるか、ということが説得力を持って迫ってくる。あれだけ広々とした大地に囲まれているのに、それがかえって閉塞感につながるような西部の現実。結果として町はわずか一人の男に牛耳られてしまっており、その支配者自身も先行きの見えなさを強く感じているという状態。だが、そこに「訪問者」がやってくる……。


 予告編では飛んでるUFOしか出て来ないので、これにライフルやリボルバーだけで立ち向かうとか無茶だろ〜、と思ったが、中盤以降はきっちり白兵戦に雪崩れ込む。なんで宇宙人は武器もあるのに素手で戦うの?とか突っ込みどころも多々ありだし、正直言ってデザインにはかなりのガッカリ感があった。さらに途中で正体の明らかになる「いい宇宙人」にはちょっと失笑。
 そもそも宇宙人が地球にきた理由と言うのが「え? そんなことなの?」というぐらい現世的なんであるが、これは宇宙人という外部の存在でありながら、西部開拓時代に実際に存在した何かと強欲な略奪者の隠喩でもあるのだろう。最後の報いの受け方などもそれを示唆する。


 村人が無差別にさらわれたので取り返しにいくのだが、さらわれた人がたまたま庶民側と支配者側でばらけていたりして、結果一緒に行く羽目になったり、西部は馬鹿広いのに行く先々でたまたま知り合いやら因縁ある部族とばったり遭遇したりして、どんどんメンバーが増えていく。ただまあ、これぐらいのご都合主義は別段珍しいものでもないし、クライマックスに物量戦を持って来るために、それを実現させた色々と強引なシナリオは嫌いじゃない。


 ダニエル・クレイグは安心の無口クオリティ。ハリソン・フォードは極悪な男のはずなのだが、映画も半分を過ぎる頃にはすっかりいつもの不器用かつ気のいいおじいちゃんに……。そしてまたネイティブ・アメリカン役のアダム・ビーチ。名台詞「ホリョダ!」『ウインドトーカーズ』の頃の織田裕二と、えらく太ってた『父親たちの星条旗』のちょうど中間ぐらいに落ちついていた。カナダ人なのにメジャーではこういう役ばかりだが、息の長い役者でもあるな。そしてあの眼鏡の人はサム・ロックウェルだったのか……全然気づかなかった。上手かったけど、光る役どころでもなかった。


 手堅い印象で充分面白かったけど、もう一つ何か上乗せ、盛り上がりどころとなるものが欲しかったところだな。

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