”MMAカンフーに着火せよ!”『導火線』
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返還直前の香港……刑事マーは有能だが暴力的で、容疑者を負傷させることはしょっちゅう。音楽隊に左遷されてしまい腐っていたが、相棒のウィルソンが潜入捜査していたベトナム人のギャング三兄弟を逮捕するため、現場に復帰する。だが、逮捕の直前、ギャングの次男トニーはウィルソンの素性を怪しみ始め……。
『エンプレス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101024/1287898070)以降の未公開作のだぶつきの中、比較的早い時期に撮られ、伝え聞かれるその内容からも公開が待ち望まれていた作品。つうか、もう本国の公開、五年も前なのかよ! 遅いよ!
アクションに総合格闘技のテイストを盛り込んでる、という話だったのだが、冒頭、なんの必然性もなくリングに上がり、タックルからマウントを取ってパウンドを落とすドニーさんの姿に、いきなり目が点になった……。うおい! これ絶対「一回やってみたかった」だけだろ!
しかしながら、暴力的に突っ走りまくるのが持ち味のドニー刑事、リングはさすがに無理があるな〜、という感じだったが、戦いの場が路上へ移ると急激に迫力が増す。タックルで、あるいはバックドロップ気味の投げで地面に叩きつけられるというのは、打撃もらって倒れるのとはまた衝撃度が違う。倒れた先でテーブルやら椅子やらが粉々にへし砕ける映像も、普段の香港アクションとは一風違った趣で見られる。
特に恐ろしいのはマウントパンチだな。主人公の犯罪者許すまじというキャラクター性もあいまって、これがまさに相手を「仕留める」テクニックだというのがよくわかる。
終盤のラスト・バトルもこれらのテクニックが満載。華麗な蹴りを得意とするコリン・チョウが打撃の攻防で優勢になるも、ドニーがグラウンドに持ち込んで反撃! 腕ひしぎ! 三角締め! 膝十字! ダメージを受けつつも、身体を反転させ、バスターで切り返し、脚で蹴って逃れるコリン・チョウ! すげえ、教科書どおりのディフェンスだ!
『SPL』に比べるとさらにドラマ性は薄くなっており、暴力でもって犯罪者に対して云々というのも、アクション演出をハードコアにするための付け足しみたいなプロットでしかない。が、陽光に照らされた香港の街で、タンクトップになったドニーがMMAムーブで躍動するビジュアルは鮮烈だし、残酷なシーンも多いがからりとした後味を残す。
『単身男女』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110313/1300018060)といい、ルイス・クーはなんで女好きそうな役ばかりなんだろう。実際好きそうに見えるけど……。今回はファン・ビンビンが珍しく美貌を鼻にかけない役でした。この後、『孫文の義士団』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110312/1299929052)、『ソフィーの復讐』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100115/1263566683)と、「私が美貌です」と言わんばかりにふんぞりかえり、ドニーさんを顎で使いチャン・ツィイーを見下すことになるので、初々しい彼女を観たい人はぜひチェックだ!
爆弾魔役で登場の谷垣健治氏が面白い。台詞もないのに非常に悪辣、さらにちょっとドジで抜けてるキャラ。ボスのコリン・チョウが弾切れを起こし、予備の弾丸を持ってるこの爆弾魔に対して叫ぶ。
「ケンジーっ!」
役名もケンジなのかよ! つうか日本人なのか!
カンフーアクション映画で総合格闘技のテクニックを見せる、という実験精神に溢れた作品で、その点に絞って言えば迫力にしろリアリティにしろ、かなりの成功を収めていると思う。無論、リングやケージでの試合をイメージするとまったく違うものだが、関節極めながら屋根から落ちる、という実際の試合では絶対にあり得ないシチュエーションを見せるいわゆる「映画の嘘」と呼べる場面など、楽しい面も多い。
残念ながら、この後のドニーさんは『イップ・マン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110424/1303616111)、『孫文の義士団』、『レジェンド・オブ・ザ・フィスト(原題:精武風雲)』(今秋公開)など古い時代を舞台にした作品に移行し、この後はMMAカンフーとでもいうべき今作のようなスタイルでは映画を撮っていない。正直、これ以上の、より洗練されたものが観られるかというと疑問符もつくが、いつかまたこういうこだわった作品にまたチャレンジしてほしいものである。
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