"オレはコールスロー・キング!"『25年目のキス』

 1999年作のドリュー・バリモアの初プロデュース作品。


 25歳で新聞社のコピー・ライターになったジョージーは、彼氏もいないしキスしたこともない。記者への転向を目指す中、そんな彼女に大きなチャンスが訪れる。ヤマっ気のある社長の命令で、高校生に変装してティーンの実態を潜入取材することになったのだ。しかし彼女は、高校生活に大きなトラウマがあった。忘れもしないプロムの日、彼女を待っていた運命とは……。苦い思い出と共に取材を開始した彼女だが、やっぱり人気グループとは馴染めず、オタク少女のアルディスに計算クラブに誘われて……。


 本作で描かれるのは、『ブレックファースト・クラブ』『ヘザース』などでも登場した、お決まりのスクールカーストの実態だ。主人公は学生時代にそこでつまはじきにされ、陰湿ないじめにあった過去がある。子役時代にいじめを受け、学校にも満足に通えなかった過去を持つドリューにとって、主人公ジョージーは、自らの分身でもある。


 高校に通うティーンエイジャーと、タイトルどおり25歳である主人公のカルチャー・ギャップを題材にしたコメディ映画であり、全体に明るいトーンで進むのだが、時折フラッシュバックのように挿入される過去の映像が痛々しく、どぎついまでにタッチが変わる。作中でも言及されるが、まさに『キャリー』だ。
 大人になってから学校に戻れたら、きっとかつてとは違う体験ができるのではないか……。誰もが一度は抱く想像と思うが、当初はうまくいかない。初日にださいカッコで行ってしまった主人公は、カースト上位のグループには混じれず、声をかけてくれたのはかつての自分のようなオタク少女。まあこれはこれで楽しい……のだけど、潜入取材を命じた上司からは、もっと人気のあるグループと付き合えとのお達しが下る。そう、それこそが、かつて学園一人気のあった男子に侮辱された自分の、もっとも望んでいたことだったはずだったのだけど……。でも、主人公はもう大人になっていて、その虚しさに気づいてしまう。
 対比する形で、学生時代は人気者だった主人公の弟も登場する。同じように高校に潜入した彼の目的は「あの楽しかった時代よ、再び」だ。野球の夢に挫折して将来を見失っている彼は、高校からやりなおしたいと願っている。でもその夢も長くは続かない。


 だが、それでいい。ティーン達には「外には君たちの知らない輝かしい世界がある」、かつてティーンだった大人には「もうあなたは、かつてのあなたではない」というメッセージが贈られる。
 大人になった主人公は、かつての自分を認め、目の前のかつて自分を傷つけたのと同じものを諭し、そして許す。これは、復讐でない、解放の物語だ。ジョックスたちも、決して憎むべき存在ではない。ただ幼いだけなのだ。一番好きなのが「コールスロー」のシーンなのだが、これはジェネレーション・ギャップを表現すると共に、ティーンエイジャーたちの無邪気さをも描いた名場面である。


 メインキャラで登場するリーリー・ソビエスキーの他、無名時代のジェシカ・アルバジェームズ・フランコも出演している。ドリュー自身も主人公と同じ25歳。非常にリアルタイム性の強い作品だ。最初に観た当時、僕は22歳だった。


 それから10年。多数の製作をものにし、今度は監督業に進出することになったドリュー・バリモアは、自らは見守る立場としてティーンエイジャーの旅立ちを描くことになる……『ローラーガールズ・ダイアリー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100626/1277479237)である。

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