"おい、そこはオレの席だよ"『PTU』

PTU [DVD]

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 ジョニー・トー監督作品!


 チンピラに絡まれ、拳銃を無くしてしまった刑事サァ。香港警察特殊機動部隊PTUの隊長ホーは、報告しようとする部下を制し、拳銃を探すサァの行動を翌朝まで黙認することにする。だが、サァのいた店で殺人が起き、拳銃を持っているはずのチンピラ達もその復讐劇に巻き込まれてしまう。一方、特捜課が殺人事件の捜査のために動き出し……。


 人騒がせな男ラム・シュー!
 冒頭の、チンピラが飯食ってるとこにラム・シューが現れるオープニングが素晴らしい。店内での座席の移動で力関係や感情のもつれをズバリと表現する。これが意外な展開につながる辺りの緊迫感も充分だ。
 しかしこのチンピラ如きに偉そうにしてるラム・シューは本当にダメな奴だ。態度でかいよ、ラム・シューの癖に(笑)。冒頭のシーンもあまりにダメ過ぎて、殺し屋に感情移入しちゃったよ。そんなバカのために尻拭いを手伝おうとするサイモン・ヤム。部下の白い目にも負けないぞ!


 『ブレイキングニュース』の時にもちょっと感じたことだが、特捜課の女刑事が「細かいことにうるさいくせに、いざとなったらヘタレ」という人に描かれてるのは、ホモソーシャル万歳、現場主義マンセーな悪意を感じるなあ。ラム・シューのダメさ加減が、愛し難いレベルに到達してるので、サイモン・ヤムさんの男気までが「同僚だったら誰でもいいの?」と頭の硬直ぶりを疑ってしまうレベルに見えてしまう。『ザ・ミッション』や『エグザイル』と本作は、「暗黒街」と「警察組織」という意味で当然非対称ではあるわけだが、組織の存続と保身が友情と天秤にかけられる前者に対し、後者はそれらが同列だし、殺人事件よりも優先される。チンピラなんて死ねばいいよ、ということだろうが……。
 そういう意味で、ラストの結果オーライっぷりに美しさを感じられるか否かで、評価が分かれそうではあるな。自分はやや否定的。


 巡回する機動隊「PTU」の日常と、人通りの減った香港の深夜の街並が美しく、88分という短尺ながらゆったりとしたリズムで物語が進行する。撮影の素晴らしさを堪能し、音楽に浸りつつ、酒でも飲みながら観たい、そんな映画である。

ブレイキング・ニュース [DVD]

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エグザイル/絆 プレミアム・エディション [DVD]

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