"キアヌさんは今日も五里霧中"『フェイクシティ ある男のルール』

 ジェイムズ・エルロイ、カート・ウィマー脚本!


 LAPDのトムは、囮捜査や違法ぎりぎりの単独行動で事件を解決してきた刑事。だが、直属の上司であるワンダーの出世と時を同じくして、内部調査班がトムの周囲に出没するようになる。密告者はトムの元相棒だったジョンソン。彼は時に容疑者をためらいなく射殺するトムの捜査に疑問を抱き、彼らにも権利があると主張していた。怒り、ジョンソンに制裁を加えようとするトム。だが、その眼前で、ジョンソンは二人組の強盗に射殺されてしまう……!


 どーも、キアヌ・リーヴスです。今作は警察機構の裏側を描いたハードなバイオレンスとして、キアヌさんの新境地と言われた作品。正義感溢れまくってるせいで暴力的で、ためらいなく容疑者を射殺したりと、やりすぎる刑事役です。元相棒は、そんな彼に嫌気がさしています。彼は、容疑者と言えど権利があり法に保護されなければならないと言います。彼も、キアヌさんとは違う意味で正義感が強いんですね。キアヌさんはそんな彼がむかついてて、彼が自分を内務調査班にちくったらしいと上司に聞かされ、一発ぶん殴ろうとするわけです。しかし、そこへ強盗が現れ……。


 抜群の行動力でもって、単独行動で犯人をぶち殺しまくるキアヌさん。上司やチームの面子には、困った奴だと思われながらもかわいがられてます。やんちゃだけど憎めない、弟分的なポジションですね。たぶん、そんな年下じゃないんだろうけど、一人だけ若々しすぎるし、自然とそう見えます。しかしバイオレントに暴走し続けてた彼も、元相棒の死の裏に陰謀をかぎつけ、捜査を開始します。しかし……どうも状況がつかめません。困惑の表情のキアヌさんです。


 ……うーむ、新境地でもなんでもないよな……いつもと一緒のキャラだろ! 事件が進展するたびに果敢に突撃するキアヌさんですが、相変わらずのいまいち状況を把握してないっぽい表情が面白すぎます。この人、自分が今何をしているのか、本当にわかってるのかな?
 さらに、キャスト見ただけでだいたいオチがわかる(笑)というハリウッドシステムの弊害のせいで、作中人物と観客を含め、事件のあらましがわかっていないのがキアヌさんただ一人という状況に陥ってしまうのです。


 いったい……どうなってるんだ。ここはどこなんだ。何が起こってるんだ……?


 あああああ、キアヌかわいそう! これは彼という永遠の弟分キャラが覚醒するまでの話なんで、広い心で見守ってあげましょう……いや、だからそれが『ハート・ブルー』とか『マトリックス』とか、いつもと一緒なんだって!
 「レイシスト」とか「アル中」とか「妻を失った」とか、まあそういう設定はあるんですけど、それが全然演技プランに影響を及ぼしてないんで、まあいつもどおりなんですよね。


 さて、一応、作中では強い男のはずのキアヌさんにも、協力してくれる弟分クリス・エヴァンスが登場。切れ者だが実践経験不足という、典型的な弟キャラ。キアヌさんにも弟分ができる時代になったのか……年月の流れを感じるぜ。
 しかし、作中でも自らの弟分キャラから逃れられないキアヌさん、そんな頼りない彼にくっついてるせいで、クリス・エヴァンスは「弟分のさらに弟分」という不可思議なポジションに陥り、最初は頼れる協力者に見えたのが、どんどんへたれになっていきます! ああ悲しき引き立て役!


 やっぱりというかなんというか、クライマックスとか激しくデジャヴを覚えたよなあ。なんね、このどっかで観たような話……。キャストが適材適所すぎるのも、ちょっと考え物のような……。見てる間はまあまあ面白いんだが、二つの正義と権力の腐敗の構造を描いた割には何も残らない。この中身の薄さにはちょっと驚く。エルロイは原案だけで、意外にまとまっててさほど破綻も見られないあたり、カート・ウィマーもメインライターとは言えないのかな(失礼!)。

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