『晩夏』図子慧

晩夏 (創元推理文庫)

晩夏 (創元推理文庫)

 『ラザロ・ラザロ』に続き、91年作品が待望の復刊。元本は読んでいるが、感想は書いてなかったので、簡単にアップしておこう。


 酒造の女将だった伯母が、行方をくらます。病弱な従兄弟の瑞生に会いに田舎へと来ていた想子は、彼の態度に不審なものを感じる。やがて、伯母の死体が発見され、疑いは共に浮気をしていた夫へと向かう。想子は、何かを隠しているらしい瑞生と、酒造の社員で元検事の唐沢と共に、謎に迫っていくのだが……。


 元本読んだ時はちょい散漫な感じだったのだが、細かい修正と、こちらの読み方が変わったのも合わせて、ぐっと締まった印象を受けた。


 病弱で美しい従兄弟と、田舎に来ている元検事という、二大イケメンが熱い。クールそうに見えて病んだ身体に冷めた情念を滾らせる従兄弟。世捨て人のように田舎にやってきたが、それでもそんな自分をもてあます怜悧な元検事。ある意味似ていて、ある意味違っている。どちらにも作者の趣味がストレートに反映されている、たぶん! そんな事を考えながら読むと、この二人の絡みのシーンもなんとなく、キャーッ!な雰囲気なのである。耽美! そしてその間で揺れ動くヒロイン! ずっしーの本は、このムードがたまらんのだよ。


 夏の陽の照りつける風景が美しく、ロケーションの妙味も味わえる佳作。
 さあこの調子で、冒頭からどん引き間違いなしの伝説の傑作『桃色珊瑚』と、今もって何の話かよくわからない『イノセント』の復刊もぜひ! その後は密かに書き上げていると言う話の、格闘技小説の出版に期待だ!

ラザロ・ラザロ (ハヤカワ文庫JA)

ラザロ・ラザロ (ハヤカワ文庫JA)

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