『忍者ルネッサンス』倉阪鬼一郎

忍者ルネッサンス!

忍者ルネッサンス!

 『田舎の事件』の系譜に連なる、コメディ小説。


 鳴かず飛ばずで帰郷した作家・蔵野は、地元・伊賀で捲土重来を期し、時代小説のプロットを練る日々。そこへ「伊賀独立」を掲げて議員に立候補するも落選した昔なじみが現れ、郷土史家と共に、伊賀の独立を実現させるべく「忍者ルネッサンス」を持ちかける。取材費をもらうもやる気のなかった蔵野だが、もらった資料にあった呪文を実践したら、なんと彼のご先祖である本物の忍者が現れてしまい……?


 おなじみ「著者自身」を主人公にしつつ、地元を舞台にした作品……ということで、すわルサンチマンの爆裂するいつものアレか、『忍者ルサンチマン』の間違いじゃないか、と思ったのだが、近年の抑制の利いた著者らしく、手堅くまとまっている。
 ご当地伊賀のご近所、大阪の人間としては、方言絡みのギャグにもストライクゾーンスレスレで変化して行くような微妙な居心地の悪さを感じてしまうのだが、畳み掛けるようなテンポでぐいぐい読ませる会話シーンは、やっぱり「関西」なのだな、と大いに感じ入った次第……。


 召喚されるご先祖様の忍者が絶望的なまでに可愛くなく、いまいち情が移る感覚も理解出来なかったためにラストはいまいち。映像のイメージなら「田中邦衛」的な愛嬌を念頭に置いて読むとまた違ってくるだろうか。少々惜しい。これは著者の簡潔な文章ゆえもあるだろうが……。


 装丁他、手裏剣のアイコンなど、本全体を通して楽しい作品。

田舎の事件 (幻冬舎文庫)

田舎の事件 (幻冬舎文庫)

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