『L change the world』

L change the WorLd complete set[DVD3枚組]

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 あまり期待してなかったが、図らずも「スピンオフ」というコンセプトの難しさを実感させられた。


 『デスノート』という作品の重要な構成要素の一つであるLというキャラクターを抜き出し、『デスノート』自体のテイストも残しつつ一つの作品として再構成する。前提となっているのはマツケン演ずる「L」ありきということであり、完成する映画はそのLの魅力を最大限に引き出し、なおかつ『デスノート』という作品内のシチュエーションでは発揮されなかった、観客の知らない新たな面も描いて見せねばならない。


 しかしながら作品は、後者のみにこだわりすぎて、すでに存在する「L」の魅力……類い稀なる頭脳と洞察力、理性的ながらも感情論を排斥しないバランス感覚を描くことを忘れていた。


 驚くべきことに、殺人ウイルスとそれを阻止できるワクチンを主題にしたシナリオは、あのまったく頭を使わなかったスパイ映画『M:I:2』と酷似している。頭脳の役立たない相手に対して身体を張って立ち向かうL……そこにLである必然性はあるのか? 子供と戯れるL、自転車に乗るL、背筋を伸ばすL……シチュエーションによっては、確かにそういうこともあろう。しかしそこにはLというキャラクターの特異性を引き立てることなしに、はぎ取ることによってごくごくありきたりな次元、作り手が理解可能と思える領域へと、故意に引き寄せようとするかのような意図が見て取れる。


 それがLの隠された一面だ……と言い張るのは、いささか「僭越」ではないか? 同人誌ならば「パロディ」として許されようが……。


 中田秀夫のホラー演出は無意味に冴えているが、2名登場した結果として役割がかぶってる子供のキャラクターや、唐突に登場する南原、メイクではったりをきかせる高島政伸、突然大量に完成するワクチン、全く生かされていない23日間というタイムリミットなど、すべてがズタズタである。


 失敗の原因はなんだろう。準備期間の短さ? 詰め切れなかったコンセプト? とりあえずブームが終わらないうちに、もう一本映画作って一儲けしようとしたがめつさか? あるいは原作なしにはストーリーラインを構築し得ないどうしようもない才能のなさだろうか? きっと全部なんだろうけど……。

DEATH NOTE デスノート / DEATH NOTE デスノート the Last name complete set [DVD]

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