『アイアンマン2』


 『アベンジャーズ』……にはまだ続かず、とりあえず続編!


 トニー・スタークが自らがアイアンマンであると明かして半年。積極的にヒーローとして活動しつつも、スタークの身体は有害物質に侵されつつあった。そんな中、他の軍需企業と結託した米軍は、彼からアイアンマンスーツを没収しようとする。機転と不遜さで切り抜けて来たスタークだったが、モナコグランプリに出場した彼の前に、同じアーク・リアクターを装備し、電磁鞭を振るう男が現れる。彼の名はイヴァン。かつて、トニーの父が追放した科学者の息子であった……!


 前半の盛り上がりがすごい。一作目の後日として、それ以降の経過を整理しつつ、大衆の前で正体をさらしたヒーローとはいかなるものか、その豪壮さをトニー・スタークというナルシシストなキャラクターを媒介に描く。同じ社長でも『ダークナイト』さんとはえらい違いなんですよ!


 しかしながら、予期せぬ事態、新たな敵の登場でその豪奢な地位からも転落……するんだけど、どうも死にそうになってる身体の異状だけでいっぱいいっぱいで、社長業から降りたり、スーツを奪われたりするあたりが、新たな危機感につながっていかない。主役の存在感が強過ぎるせいか、「体調さえ戻ればなんとかなるだろ」としか思えない。で、それもなんとなく都合良く解決しちゃうしなあ……。
 替わりに社長になったグウィネスの危機とか、もっともっと矢継ぎ早にピンチを畳み掛けないといけなかったと思うのだが、サム・ロックウェル演ずるライバル企業のオーナーが、間抜けな小物としてしか描かれていないので、前作のジェフ・ブリッジスのような企業の論理の対比になっていない。替わりに血の宿命を負って強大な悪役となるべきミッキー・ロークの方も、正当な怒りなのか単なる逆恨みなのか、中途半端。ハワード・スタークには息子を想い、世界の未来を憂う一面があった、というのはいいのだが、非情な経営者としての側面もあったわけで、それを並列して描くべきなのに、どっちつかずにお茶を濁すのはいただけない。
 キャラが増えたのはいいが、描き方が散漫で、主役の行動以外に物語を引っ張る要素がない。だからか、せっかくサミュエルと絡むシーンでも、このアイパッチ野郎自身に能動的に動く要素が薄いせいで、ドーナツショップで顔つき合わせてしゃべる、なんてバカな映像になってしまう。クライマックス前に寝そうになったぜ!


 軍仕様のアイアンマン、無人機との大決戦など、クライマックスは大盛り上がりなのだが、そこまでお話が続かなかった。『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのかったるさにも通じるな、これは。
 あ〜、惜しい! ドローンが上空のアイアンマンを地上から砲撃するとことか、感涙ものなんだよ。もっともっと盛り上がったはずなのになあ。やっぱり『アイアンマン』にもエドワード・ノートンが必要だよ。