『12番目のカード』ジェフリー・ディーヴァー

12番目のカード

12番目のカード

 全身不随の鑑識学者リンカーン・ライムのシリーズ第6弾。


 ハーレムで黒人少女をつけ狙う謎の暗殺者。襲われる寸前に少女が調べていた彼女の先祖、140年前に窃盗で逮捕されたと言われるチャールズ・シングルトンにまつわる、南北戦争当時と関わりがあるのか? ライムは現在と過去、二つの事件に直面する。


 幾つもの謎とプチどんでん返しが、並行して進む構成は健在。しかし、140年前の事件は基本的に進展しないため(笑)、少々キャラクターの描写や内面のウエットな部分にも筆が割かれている。セリットー刑事のスランプとか、あると思わなかったのでちょっと笑ってしまった。
 この前の『魔術師』や次の『ウォッチメイカー』などの方が、「これぞライムシリーズ!」と評価は高いようだ。が、異様に狡猾かつ冷静な犯人が、本当にこの通り進行するのか疑わしいくらいに複雑な計画を仕掛けて「フフフ、計算通りだ〜!」という内容には、個人的には食傷気味。いくつかの思惑が交錯して事態が複雑化してしまった『コフィン・ダンサー』が構成的には一番だし、もう「スーパー犯人」はいいんじゃないかなあ。


 少々地味だが、ゲストキャラの少女の行く末とともに、事件にもキャラクターの内面にも綺麗に解決のつく今作は悪くない。もういつシリーズが終わってもいいんだが、これぐらいのクオリティは維持してほしいものだ。

コフィン・ダンサー〈上〉 (文春文庫)

コフィン・ダンサー〈上〉 (文春文庫)