”闇の音”『ドント・ブリーズ』
盲目のおじいちゃん映画!
デトロイトで窃盗を繰り返すロッキー、マニー、アレックスの三人が、街を出る前の最後の標的として狙ったのは、保険金を受け取り隠し持っていると言われる老人の家。盲目であるという老人から盗み出すのは、実に簡単な作業である……はずだった……。
『ローグ・ワン』に続いて盲目ものの映画を見てしまった。舞台はデトロイト。警備会社に勤める父親の持つ情報を盗み出し、セキュリティを外して重犯罪にならない3万ドル程度までの窃盗を繰り返している三人組。足を洗う最後の大仕事として、娘の事故死による保険金を受け取ったと言われる盲目の老人宅を狙うことに……。だが、老人は元海兵隊所属の凄腕だった!
最初に問題の屋内に入るシーンで、あらかじめ屋根裏やらベッドの下の銃やら、これから起きることの仕掛けを見せてしまうあたりが面白い。それぞれ、割合さらっと使われたり、重要な役割を担ったりするのだが、そうやって最初に見せておいて、実はそれはすべてではないのだな。後からそこでは見せなかったサプライズが登場したりして、全ては驚かせるテクニックである。
屋内の小道具の位置関係とカメラワークで迫真感を出す、非常に真面目な内容で、意外とハッタリもなく、あくまで作中に登場するもののみで怖さを表現してくる。海兵隊出身のじいさんだが、何人殺したとか設定で上げ底するのではなく(例:俺の教官だった男だ)、あくまで本編中のアクションによってのみ、強さ恐ろしさを表現していく。
対戦相手の泥棒三人組との戦力差が圧倒的であるかというとそうではなく、こうすれば勝てるんじゃないか、俺ならこうするんだが……と考えながら観るのも楽しいですね。
所詮、小悪党どもだし、こいつらを成敗するおじいちゃんを応援するのもありか……?と思いきや、怪物的サイコっぷりが発揮される中盤のサプライズもナイス。レイプはしない、と言うが、チンコ使わなくてもレイプはレイプですから、という余計におぞましい方法を使ってくるあたり最悪だ! なんか割れそうだし、毛がついてて超汚いし!
さすがに後半はネタが尽きてくるかな……と思いきや、犬を頑張らせて粘るのも良かったですね。
舞台となるデトロイトは行政が崩壊してほぼ廃墟で、周辺に誰も住んでいない。銃をぶっ放しても犬が吠えても助けを求める叫び声をあげても、誰もこないというこういう映画にぴったりのロケーションが、実際にリアリティを持ってしまっているのだな……。オレはてっきり、「最後に警官さえも全く来ない」というオチになるかと思ったよ。
心理的に怖いのではなく、理詰めでハラハラさせてくる体感型のアトラクション・ホラー映画で、非常に面白かった。脱POVがこれでまた進むのかな、という気がするね。
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