”愛に真剣な私を愛して”『so young』


 大阪アジアン映画祭2014、十本目!


 初恋の彼を追いかけて大学にやってきたウェイ。だが、彼は彼女に会う前に留学してしまい、ウェイは友人に慰められ傷心の日々を送っていた。ウェイを口説く男が減る事もなかったが、ある日、彼女はチェンという男にそっけなく扱われ……。


 あのヴィッキー・チャオがついに監督業進出ということ。えーっ、もう『少林サッカー』は13年も前の映画になっていたのか……。卒業制作で作った4時間の前後編を2時間20分ほどにまとめて劇場公開。大学時代を前編、数年後を後編で描く。
 主演の子が……よく見るともちろん違う顔なのだが……メイクでなんかヴィッキー・チャオ本人に似せてない? 役の名前も「ウェイ」だしな……。もう少し若ければ自分が主演していたのかもしれないね。故郷から幼馴染の男を追いかけてきたはずが、その男が海外に留学してしまい、早くも目的を失った大学生活。そこで自分にすげなく振る舞う男と出会い……。
 この男の役がマーク・チャオ。いやー、いつも思うんだけど……ブサイクだな、この人は……なんでいつも主役なんだろ……。『少林サッカー』の反則チームのキャプテンを思い出すのはオレだけなのだろうか……。去年は『メモリー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130401/1364722179)でも観ましたね。


 さて、このブサメンに冷たく扱われ、ズッコケてパンツまで見られたことで恋に落ちる主人公……えっ、なんで!?と思うが、まあ少女漫画なんかでは時々ある設定か……。ちやほやされることに慣れていたがゆえに、そうでない扱いをする男がクールでカッコ良く見えるということか。で、押しの一手でアプローチを開始し、冷たくしてるマーク・チャオも段々とその可愛さによろめいてくるのであった。いやいやいや、負けるなマーク・チャオ! 意志の力で耐えろ! と声援を送ったが、ついに陥落し乳をもむ男であった……。
 なんかこの辺り、見ていて恐ろしかったな。自分が愛されるべき、愛されて当然、愛さない男はおかしいと思っている主人公……いやさ、ヴィッキー・チャオの恋愛観が……。可愛ければ何でも許されると思っていたのか、少女時代には!?


 大学時代のまぶしいぐらいの輝きは、『GF*BF』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130331/1364614827)や『あの頃、君を追いかけた』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20131022/1382454223)にも匹敵するレベルだと思うが、後半の陰鬱さがそれを粉砕する。いや、後半もそんなに悪いとは思わないのだけれど、ギャップを作ろうとして無理に暗い話にしてないか、という疑いの浮上するわざとらしさ。いや、車の事故とかさ……。
 あの押しまくりの大学時代はどこへやら、すっかり暗い表情になっている主人公であるが、そのイズムが変わったわけではないのだな。留学してしまった幼馴染と再会し、一度はよりを戻しかけるのだけれど、彼の前の相手の話を聞いて身を引いてしまう。その女は、入院していた彼の看病に押しかけ、家まで押しかけ、挙句に目の前で薬を大量に飲んで自殺未遂を……いや、怖いって、その女! でも主人公は、いやさヴィッキー・チャオは、「愛に真剣だったその人を愛するべき」なんてことを言い出してしまうのであった。
 そしてもはや自分も、一度は海外に行って別れたけどまた戻ってきたマーク・チャオも、そうして愛に真剣になる気持ちを失ってしまったのだ……と言いたいのであろうか。いや、控えめこそ美徳なんて言うつもりはないが、三十路になってそんなこと言ってる方がおかしいから!


 同級生たちのキャラ立ちなんかも含め、ところどころ輝いてる映画だと思うのだが、ちょっと後半への以降がスムーズに行かなかった感じだなあ。全長版ならばまた印象も違うのかもしれないが、惜しいところでもある。が、やはりその恋愛観が怖すぎて、じぇんじぇん主人公に思い入れられなかったところが最大のマイナスポイントであったな……。

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