"海の彼方のもう一つの人生"『二重露光』


 大阪アジアン映画祭クロージング!


 整形外科に勤める女医のソンチュイは、同僚であるリウドンと付き合っていたが、ある日、彼を親友のシャオシーに寝取られてしまう。口論の末に彼女を殺したソンチュイは、再手術を要求していた患者をリウドンと同じ顔に作り替え、警察の追求を逃れようとするのだが……。


 今回、このリー・ユー監督の映画にスポットが当たっていて、『北京ヴァイオリン』『ブッダ・マウンテン』と共に今作が特集上映されていた。今回の映画祭、みんな面白かったが、恋愛もの多くね? カンフーはないの?とちょっと物足りない感もあり、『毒戦』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130315/1363322007)と並んで、どうやらサスペンスらしいこの映画には、結構期待していたのである。


 ファン”美人”ビンビンと言えば、『ソフィーの復讐』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100115/1263566683)、『孫文の義士団』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110312/1299929052)などが印象深いが、単独主演は観るの初めて。この顔が整形外科医というのは、何か有無を言わせぬ説得力があるな……。患者には顔を元に戻せとネチネチ絡まれたり、彼氏と病院内でいちゃいちゃしてたりするところを院長に見られて微妙な顔をされたり、色々と苦労は絶えないのだが……。
 ところで、ここらへんでやってる演出が、この手の映画については極めてオーソドックスなそれなので、オチはもうかなり序盤で想像がついてしまったのだよね。その仕掛けが何を意味しているかの謎解きが後半で描かれる。前半は奥歯に物の挟まったような描写が続くので少々かったるかったが、後半はそこがパズルのようにはまっていく過程をじっくり見せ、なるほど、タイトルの『二重露光』とはこれを指しているのか、と納得した次第。


 序盤、次々に起きる奇怪な事件を前にして、ファン・ビンビンがどんどん病んでいくのが不安定な映像で延々と描かれる。しかし病んでもやつれても美人は美人で、何をやってもその完璧な美貌は衰えないのであった……。ストーリーがかっちりはまっていく中盤から終盤にかけて、どんどん奇矯になりやたらと水に濡れるあたり、悲劇的を通り越してちょっと引いてしまうのだが、これは自傷行為の表現なのだね。しかし裏の意味が見えたあたりから、主人公の上司の院長が異様にいい人に見えて来たから笑った。面倒見良すぎるだろ!


 サスペンス要素は確かにあるが、エンタメとしては暗すぎる鬱映画で、これをクロージングに持って来るのはある意味すごい! ラストは救いもある美しいシーンでまとめるのだが、何か微妙な気分で劇場を後にしてしまったよ! ジャンル映画としてはバランス悪く、やや怪作よりな印象でありました。


 これにて今年のアジアン映画祭も全て終わり。5月には『ポーとミーのチャチャ』のテレビ放映があるので、そちらも要チェック!

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