"涙も可愛いものもメガ盛りですよ!"『メモリー First time』
投薬による記憶障害に悩まされているシーチャオは、母と二人暮らし。ある日、遊園地でのバイト中に、高校時代に思いを寄せていた同級生ゴンニンと再会。母の反対をよそに想いを深めていく。だが、シーチャオは筋無力症を患い、長くは生きられないと言われていた……。
韓国映画のリメイクだそうで、まったく筋は変わってるそうだが、この物量には確かに共通するものがあるな。とにかく、これでもか、これでもか、と怒濤の寄りで見せる。
主演のアンジェラベイビーの隙のない可愛さは元より、細かい「笑い」と「泣き」の要素を絶えず入れ込み、そのバリエーションも恋愛や母子関係、父子関係、バンド仲間との友情、人情と多岐に渡る。さらに小洒落たメルヘンチックな道具立てや音楽も欠かさず、難病ものでもある、というてんこ盛り状態。
序盤はその小道具の使い方、つなげ方がなかなか上手いな、と思っておったのだが、最初のどんでん返しが起こって以降はややあざとく感じだし、そこまで裏があったことにしなくてもいいんじゃないか、そこまでそのガジェットを引っ張らんでもいいんではないか、となってくる。しかしまあ終盤までそのテンションを貫き通し、「どうだオラ! これはこういうことだったんだ! 泣けオラ!」と何度も何度もタックルを仕掛けてくるようなその気合、俺は嫌いじゃない。個別にセンスの光るシーンが多かっただけに、トンカツと豚汁と回鍋肉を出すようなこのくどさはもったいないが……。
ラスト近くは思わず「えっ!」と声出しそうになる展開の連発で、難病の主人公がダンスの舞台に立つ中、ブランクあるはずなのになんでこんなに上手いんだ、そしてこれが舞台初参加なのになんでセンターなんだ、という突っ込みも虚しく、フィニッシュはまさかの『ブラック・スワン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110512/1305173515)で締める! アンジェラベイビーは手つきやフォームが本物っぽく、実際にダンス得意なんであろう。そういう意味で、実にアイドル映画であったな。『ハーバー・クライシス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120921/1348203614)に出ていたはずだがまったく記憶になく、『桃さんのしあわせ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121212/1355307924)にも出てたっけ……? あ、あの慰問に来て月餅を配る女? まあそんなこんなの役に比べたら、俄然、魅力を引き出しておるよ。映しっぱなしだしな!
あ、このあともまだまだ特盛りですから。歌はあるし、パネルはあるし、さらに「えっ、これってそうだったの?」という展開がエンドロール後まで続きますから!
あらゆる恋愛物映画のクライマックスをつるべ打ちしたチョン・ジヒョンのアイドル映画『僕の彼女を紹介します』を思い出したな〜。げっぷが出そうになるほどの泣きの大攻勢に、半ば圧倒される勢い。
そして終わったあともまったく油断できず、終映後のティーチインでも最後の質問でプロデューサー(右の女性ね。左の男性が監督)が、
「みなさん、泣きました?」
やっぱりそこかよ! それが狙いなんだよな! 正直言ってあざとすぎるし、もっと抑えた方が完成度上がったと思うけど、ここまでやったら逆に清々しいという気持ちもあり。好きな人はすごく好きだろうなあ。
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