"MAD犯人、3人の共犯者"『アクシデント』
ジョニー・トー製作作品。
白昼、ガラスの落下により死んだ暗黒街の大物。事故と断定されたその事件は、しかし仕組まれた殺人だった。周到な準備と緻密な計算で偶然に見せかけて殺す暗殺者の四人組。だが、次なる依頼に応じ、質屋の男の父親を事故に見せかけて殺すべく仕組んだ計画に、小さな綻びが生じる。そして襲いかかる予期せぬ事態……。それは偶然ではなく、彼らと同じように事故を仕組んだ者がいるのではないか?
ひさびさにシネマートで香港映画をフィルムで観られた! 嬉しい!
ちらほらと描写や設定に似たところが散見され、『MAD探偵 7人の容疑者』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110308/1299510758)の姉妹編的な雰囲気がある。が、作り方はまったく違っていて、『MAD探偵』のような混沌とした印象、ライブ感はなく、ストレートに細かい描写を積み重ねてラストぎりぎりまで引っ張って行く構成。ともすれば刺激には欠けて見えるものの、最後の大オチでの腑に落ちる感覚のためと思えば納得。
主人公、じいさん、太っちょ、女、という四人組で、主人公以外は名前もよくわからないし、パーソナリティも簡潔にしか示されない。人物の内面よりもその行動を追って行く。そのシンプルさゆえに大仕掛けと構成の上手さが引き立つ。
おなじみの香港の雑多な街並のロケーションも素晴らしく、雑踏や雨の夜などを落ちつかないカメラワークで捉えた映像が雰囲気を出している。説明台詞がほとんどなく、本当に映像だけで積み重ねて行くのだが、しかし、実はそうしてコミュニケーションなしで事態を捉えて行くことの危うさをも描いていることを考えると、「映画」で示される「現実」とは何なのか、とちょっと考え込んでしまう。
今回はチャラくなかったルイス・クー! かつて、妻を「車の事故」で失った男。だが、それを偶然を装った殺人であると断じ、自らそうして偶然や事故を装って証拠を残さずに殺しを行う稼業に手を染めている。中盤以降、自らの巻き込まれた事件の謎を追うのだが、日頃、絶対に証拠を残さない、をモットーにやっているので、その石橋を叩いたけど渡らない性格のせいで全然その捜査も進まず、若干まだるっこしい。とはいえ、ここらあたりのまだるっこしさも伏線なのだなあ。
ごちゃごちゃ書いてるとネタバレになるのであまり詳しく書けないが、タイトルからして非常にかっちりしたプロットと構成を持った映画。見終わった後にキャラクターの行動の意味を解釈していくのが楽しいが、そこは書かずにおこう。ジョニー・トー監督作とも、ワイ・カーファイとの共作ともまた違う路線の、一風変わった作品に仕上がっていて、比べて観たら面白いよ。
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