“夜のプールで”『青春の名のもとに』


OAFF2018『青春の名のもとに / In Your Dreams / 以青春的名義』予告編 Trailer

 大阪アジアン映画祭2018にて。

 16歳の男子高校生、張子行は夜の学校のプールに落ちた女性を助ける。翌日、彼女は彼のクラスに代理教員としてやってきた。家庭や学校生活に鬱屈を抱えた張子行は次第に彼女に惹かれていくのだが……。

 今回の香港ナイトはこちら。脚本家であるタム・ワイジェンの初監督作で、女教師と男子高校生の年の差恋愛もの。なんかAVみたいな設定だな、と思ったが、割と最近韓国映画でも『女教師 シークレット・レッスン』なんて映画もあった。こちらもしっかりセックスが絡む話だったが、今作もそうかな? しかし主演女優はカリーナ・ラウということで、なんぼなんでも年の差がすごいな……。

 新人の初監督だが、カリーナ・ラウが脚本に入れ込んで、自分がやりたいと言ったそう。男子高校生はボケ老人になった父親を世話しているのだが、この父親が往年のアクション・スタートン・ワイさん! えーっ、こんな年寄りになってたか、とちと驚いたが、もちろん今作ではアクションを封印。大陸に去った妻の帰りをひたすら待ち続ける、夢見る老人。息子は息子で母が去ったシーンを強烈に覚えていて、結構トラウマになっているのだな。帰るわけないじゃんとわかっていて、父親との認識には相当ギャップがある。

 で、顔はおぼろげだがヒールやらストッキングが印象に残ってる母に、カリーナ・ラウ先生の面影を重ね合わせるのであった。まあこちらはよくあるちょい可哀想なマザコン、という感じだが、さすがに「本気」というところまでは突っ込まないものの男子高校生に癒しを求めるカリーナ・ラウ先生の危うい感じはさすがだったな。もともとちょっと顔が怖くて、綺麗系のメイクもしないものだから、何をやっても割合マジに見えていちいちぎょっとさせられる。

 正直、そこまで奥深くに立ち入らない話の展開含め、地味は地味だが細部にセンスを感じ、小品ながらなかなかいい映画だったんじゃないの、という後味。クライマックスの「ベッドシーン」も変な緊張感がありましたな。

 監督は、大学時代に親友が先生を好きになってしまい、それを責めてしまったのが心残りだったということで、今作は彼女のために作った、とのこと。すごい深いテーマじゃあもちろんないが、高校生にも大学生にも男子にも女子にも若年にも中年にも時に訪れる、心の揺らぎや不安定さに見舞われる一瞬を切り取った映画と言えるかもしれないですね。