”Gを駆逐せよ!”『ゴジラ 怪獣惑星』(ネタバレ)


アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』予告

 2万年後の地球!

 21世紀、人類は半世紀に渡る巨大怪獣との戦いに疲弊し、そして最強の怪獣ゴジラに敗れた。万策尽き、外宇宙に逃れ放浪する彼らだったが、移住予定の惑星は人の住める星ではなかった。移民船に乗る青年ハルオは、地球に帰還しゴジラを倒すべしという計画を提唱するのだが……。

 巨大怪獣の復活と、その中で最強のゴジラによって文明を破壊された人類が、他星への移住を目指して宇宙に逃れている、というのが前振り。えっ、そんな外宇宙へどうやって……と思ったら、エクシフなる邪馬台国人みたいな髪型した宇宙人と、ビルサルドなる強面マッチョの黒人のような宇宙人が登場。見た目は地球人ぽいが、彼らが地球にやってきてオーバーテクノロジーをもたらしてくれたという設定なのね。で、彼らの技術でゴジラを倒そうとしたけど失敗し、みんなで宇宙に逃れて放浪しているという……付き合いいいな! 普通、ゴジラに負けた時点で地球人なんかほっぽいて自分たちだけで逃げないか? 地球人なんて宇宙に出たことない連中だし、どう考えても足手まといの無駄飯食いだと思うんだが……。

 で、地球から逃れた人類は数千人ぐらいなのだが……白人と日本人しかいないぞ! これは……さもしい……さすが日本初のアニメだ……。アジア系っぽい顔をした人は全員日本人で、中国系とか韓国系はいないのか。で、やっと黒人が出たかな、と思ったらこれがビルサルドで宇宙人であるという……。なぜ地球人の黒人はいないんだ!
 このビルサルドというのは、要はブラックホール第三惑星人がモデルなのだが、あいつらって『ゴジラ対メカゴジラ』では猿人だったのだが……。猿人を改変したら黒人になった、というのはこれは設定としてかなりやばいんじゃなかろうか。
 エクシフはもちろんX星人であり、こっちは女性が見当たらないな……。やっぱりみんな同じ顔をしているんだろうか?
 これで世界市場に売り出すとか本気なんだろうか、と心配になってしまう。

 結局のところ、異星に移住すると言っても定住できるような環境の星に、そんな数十年やそこら飛んだぐらいでつけるはずもなく、やっぱり地球に帰るべきじゃないか、というのは意見としてある。もちろん、人類を滅ぼしたゴジラはいるが、ウラシマ効果で何千年も経ってるから滅んでるかもしれないし……。
 で、主人公はその地球帰還派の意見の持ち主であり、その中で、人類の不倶戴天の敵であるゴジラを抹殺すべし、と言っているのであった。船内でゴジラの弱点を研究し、打開策を見つけているのもその執念ゆえということなのだが、地球帰還のための論理的帰結、必要悪としてゴジラを倒そうというのではなく、また個人的な仇としてでもなく、「人類」「人類」とやたら主語を大きくして対ゴジラを煽るあたり、何かカルト宗教のように聞こえてくる。まあ身もふたもないことを書くと、「巨人を駆逐せよ」っぽいことを言ってるなあ……とも思ったわけだが……。
 そんな志の低さがあるかは別として、じゃあ作り手がこのカルト宗教に肯定的かというとそれはまだ不明であり、なんとかしてやっつけたゴジラは実はミニラに過ぎなかったのだ……というオチが今作には待っているからである。
 主人公の完膚なきまでの敗北と、さらに人類の生き残りが地球にもいたのでは?ということを匂わせて本作は終わるので、次回からはカルトは死に絶えてるかもな……。

 別にまるごとつまらないかというとそんなことはなくて、説明が長いと言われた前半も、アニメならではの省略でごまかし、説明自体もぼんやりとすませてるとこがかなりあって、きっちり端折ってる方だと思うが、これで長いとか言われたらかなわんわな。
 物資や食料がカツカツだったはずなのに、爆弾はいっぱいあるんだな、とか突っ込みどころも多いし、肝心のゴジラがキメカットがなくていまいち格好良くないなと思ってたのは、実はミニラで後から大物が出てくる演出のためでもあるので、まあしようがないのである。

 まああくまで助走ということで、続きに期待しておきたい。なにせ次はメカゴジラが起動してガチ対決、こちらも増殖して対抗するようだしな! メカゴジラを使って相打ちに近い形でゴジラを封印、しかしラストで、かつてエクシフを滅ぼした黄金の龍が天より舞い降りてくるんじゃないかな……。

GODZILLA 怪獣黙示録 (角川文庫)

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シン・ゴジラ

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